【column】掃除は科学!汚れ落ちがUPする理論的お掃除のススメ

2023.03.15 | お掃除

真新しい新居、いつまでもキレイに保ちたいですよね。毎日の掃除をもっと効率よく、効果的にして、ピカピカをキープしましょう。 「日本清掃収納協会 清掃マイスター1級」の木下衣子さんに、掃除のポイントを教えてもらいました。

3回目の今回は「そもそも汚れって何だろう?」という、ちょっと科学的なお話。ひとくくりに「汚れ」といっても、その性質はさまざまです。最適の対策法が分かれば、お掃除の時間も手間もぐっと減らせますよ!

乾いた汚れは乾いたままで!

汚れの一番基本的な分類は「乾いているか、湿っているか」ということ。「意外と知られていない掃除の基本ルールで、『乾いた汚れは乾いたままで』が原則なんです」と木下さん。

例えば
●棚の上のほこり
●トイレの床に落ちたトイレットペーパーの細かな紙くず
●玄関タタキの土ぼこり

などを、ぬれたぞうきんで拭くのはご法度。細かな粒が筋状に残って、余計に汚れが目立ってしまいます。そこで有効なのは、からぶきやほうきで掃くといった掃除法。古くなったストッキングを棒に巻き付けた手製のハタキを使うのもおすすめです。ハタキは、市販品もありますが、古ストッキングの静電気で絡め取るのも、効率が良いそうですよ。いずれにしても、乾いた汚れは水気を使わず掃除しましょう。

乾いた汚れは上から下に順序良く掃除していくのもコツ。ふわふわと下に落ちる性質を利用して、床にまとめて取り除きましょう。特に家族で掃除に取り組むときは、動く前に手順をきっちり考えておくと良いですね。

中でも段取りが重要なのがトイレ。上記の通り、ペーパーの「乾いた紙くず」が床に落ちている一方、メインは水拭きが必要な便器まわりです。順番としては、まずペーパーから出る細かな紙くずを掃除機できれいにしてから、水を使った作業へ進むとスムーズ。紙くずが水を吸うと、やっかいな汚れになってしまいます。

液状の汚れが放置されて「乾いた」場合は、汚れを湿らせてゆるめ、ぬれたぞうきんでふき取りましょう。お茶や汁物の食べこぼし、お風呂の鏡に着いた水垢などが、この類です。

酸性?アルカリ性?洗剤選びも科学です

身近な汚れも、実は「酸性」か「アルカリ性」かに分けることができ、それぞれによって適した洗剤が異なります。

「中性洗剤はどちらにも有効な分、効果は軽め。しっかり落としたいときは、汚れの性質によって洗剤を使い分けるのがおすすめです」と木下さんは教えます。

例えば、トイレのアンモニア臭は、アルカリ性の尿汚れから発するもの。酸性のクエン酸を使うと、汚れもろとも、においが中和されます。
皮脂や油汚れなど酸性の汚れに強い重曹やセスキ炭酸ソーダは、不純物の少ないものを選べば、食品を扱うキッチンでも安心して使えます。ただし、アルミ塗装面にはご注意を。塗装をはがしてしまうため、トースターなど塗装されたものに使うときは素材を確認しましょう。

合成界面活性剤を使った洗剤よりも、クエン酸や重曹など、洗剤はできるだけナチュラルなものをおすすめしているという木下さん。
「強力な塩素系漂白剤と賛成洗剤を、混ぜると有毒ガスを生じるものもあります。表示をよく見て使ってくださいね」と注意を促していました。

「温度と時間」で汚れを落とす

一般的な汚れが、付いてからきれいになるまでの経緯を考えてみましょう。

① 乾いた汚れは乾いたまま、湿った汚れは水拭きできれいになる
② 乾いた汚れ→水分を含んでペタっと張り付き落ちにくくなる
③ ②は、15分清掃していれば、ほぼ水拭きで落ちる
④ 水拭きで落ちない汚れは、酸性かアルカリ性かを確認し、合う洗剤で落とす

付いて1日以内の汚れなら、だいたい①~④のどれかに該当するはず。ですが強い火力で焦げ付いた汚れや、長期間放置してしまった汚れには、強い洗剤や物理的な力が必要です。

「汚れにアプローチするときは、4つの要素を意識して対策を考えると良いですよ」と木下さんは言います。4つの要素とは…

●温度
●時間
●物理的な力
●洗剤の濃度・強さ
例えば、パッキンに見つけた小さなカビ。強い塩素系洗剤を振っていきなりゴシゴシこすると…「イマイチよく落ちないうえ、傷が入ってしまった」なんてことも。つまり、ご紹介した4要素のうち最初から「物理的な力」と「洗剤の強さ」に頼っていると、思わぬトラブルを誘発してしまう可能性があるのです。

「その2つの要素をできるだけ減らし、『温度と時間』で勝負するのがポイントです」と木下さん。

① パッキンのカビを見つけたら、その場所にキッチンペーパーを置いて洗剤を染み込ませ、ラップで湿布して20~30分置く
② 次にまずは軽く拭いて、取れなかったらこすってみる。
という手順がベスト。時間をかけて洗剤を浸透させるのがコツです。

同様にガスコンロのこびりつきも、重曹やセスキ炭酸ソーダと水で湿らせたキッチンペーパーで湿布して。お出かけなどのタイミングを利用して数時間おけば、汚れがスルッと取れてしまいます。ふき取った湿布ごと汚れを捨てられるのも、手軽で良いですね。
IHクッキングヒーターの場合は、クリームクレンザーを塗布してお湯をかけ(水分がないと傷が付きます)、ラップやアルミホイルを丸めて軽く磨くときれいに落ちます。「この方法は、クッキングヒーターのメーカーさんに教えてもらったんですよ」と木下さん。

最も油汚れがたまりやすい換気扇は、重曹を溶かしたお湯に浸け置きして、「時間」と「温度」のW効果を狙いましょう。
「ここ、いつも手間がかかっているな…」と思う場所は、4つの要素のうち「物理的な力」ばかりでアプローチしているのかもしれません。ぜひ「時間」と「温度」を活用して、いつもの掃除を見直してみてくださいね。

汚れの予防も、科学的に

身近な素材の特性を活かせば、汚れが付くことも予防できます。制菌効果があるアルミホイルは、丸めて排水口に入れておけばヌメリの防止に。水をはじくロウを水回りのパッキン部分に塗っておけば、カビを防ぐ効果が期待できます。
ほかにも、冷蔵庫など高い家電・家具の上に不要の広告やカレンダーを置いたり、洗濯機のホースにラップを巻いたりと、たまると手ごわい「ほこり」にも、ぜひ先手を打っておきましょう。

液だれが気になる冷蔵庫のドアポケットには、キッチンペーパーを敷いておけば安心。取り替えるときにスプレーで水を含ませると、ペーパーは使い捨て雑巾に変身します。汚れ防止からお掃除までカバーするアイデアです。

靴箱には不要になった紙を敷き、掃除しながら新しいものに変えていくと簡単にキレイをキープできます。紙は梱包の緩衝材として入っているものが、適度な厚みで使いやすくおすすめ。紙は吸湿効果があるので、湿気やにおいの軽減も期待できそうですね。

取材ライターのつぶやき

取材中に伺った「掃除は科学」という木下さんの言葉が印象的でした。まさにその通りで、汚れを物理的性質(乾か湿か)と化学的性質(酸性かアルカリ性か)によって分類すればこそ、効果的な掃除の方法や洗剤が分かるというもの。科学的な理論に裏打ちされたやり方を学ばせていただき、「なんとなく」でやっていた自分の掃除を見直す機会となりました。

今回のSpecialist 日本清掃収納協会認定講師 清掃マイスター1級
木下衣子(きのした きぬこ) さん

「認定講師」資格を持つ清掃マイスター。
「掃除はコミュニケーション」を合言葉に、おもてなしの心が伝わる、効果的なお掃除の方法を教えています。自身の子育て後、清掃マイスターをはじめキャリアコンサルタントやマナー講師などさまざまな資格を取得。幅広い知見と豊富な話題で彩られた講座が人気です。


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