真新しい新居、いつまでもキレイに保ちたいですよね。毎日の掃除をもっと効率よく、効果的にして、ピカピカをキープしましょう。 「日本清掃収納協会 清掃マイスター1級」の木下衣子さんに、掃除のポイントを教えてもらいました。
最終回となる今回は、ほっと居心地の良いわが家をつくる、掃除の極意をお届けします。おうちをキレイにすることは、家族を慈しむこと。テクニックも大切ですが、本当の効果は家族一人一人の心にこそ現れます。掃除の概念が180度変わるその極意を、ぜひ毎日の暮らしに生かしてみてください。
ゴールは「キレイ」までの道のりにある
「キレイになった…!」と思ったそばから散らかって、ゲンナリしてしまうこと、ありませんか?特に子育て中の片付けは至難の業。「子どもに掃除を身につけさせたい」と願っても、一緒に掃除をする時間が取れるのは休日くらい。子どもと一緒のペースでは、結局片付かないまま…ということもよくあります。

ここまでお伝えしたとおり、掃除には基本ルールがあります。衛生的で片付いた環境は、安全な子育てにも大切。でも実は、目指す「キレイ」はひとつではありません。ゴールはおうちごと、状況ごとに異なります。
SNSですっきり片付いたお宅を目にし、憧れや焦りを感じることもあると思いますが、そもそもおうちはプライベートゾーン。本当は、他と比べるところではないんですよね。木下さんが、こんなエピソードを教えてくれました。

「お風呂のスクイジー(水切り)は、すぐに掃除ができるように動線を考えてあえて目に付くところに置くと効率が良い、と生徒さんなどにお伝えしています。
・・・でも実は、私はスクイジーを本当は隠したい派!癒しの空間に道具を置きたくない(笑)。つまり極めていくと、家族の間でも好みやアイデアをすり合わせる作業が必要になる。そこに掃除の奥深さがあります」。
掃除で大切なのは、出来栄えよりそのプロセス。他のお宅と比べるまでもなく、考えるべきは共に暮らす家族の気持ちです。互いが納得していないと、片付けは進みません。また一見キレイに見えても、掃除をした人が負担や不満を感じていたら、どこか安らげない空気が漂ってしまうことも。
では、どうしたら家族みんなが心地よい「キレイ」を実現できるのでしょう。
「次の人」を、迎える気持ちで
「例えば、大掃除は新年の年神様をお迎えするために行いますよね。家族に対しても同じ。次に使う誰かのことを考え、迎え入れるという視点になれば、無理なく『キレイ』が続くのではないでしょうか」と木下さんは言います。

自分が汚したらひと拭き―。それは次の人が困らないためのちょっとした心遣いです。「お友達の家にお邪魔してトイレを使ったら、汚れてないか振り返って確かめますよね。同じように家族同士でも気持ちよくバトンタッチしたいもの。そのための環境を整えてみてください」。
例えば以前ご紹介したように、手に届く場所に道具を準備することで(【column】1日15分でOK!時短掃除をかなえる小道具たち参照)、さりげなく掃除を促すことができます。

さらに大切なのが、「暮らしていれば、必ず汚れる」という前提をしっかり共有すること。「特に、子どもさんが『汚しちゃった…』と伝えてきたときは重要。怒ってしまったら、次からは汚れが放置されてしまうかもしれません」と木下さんは教えます。
汚れに気づけないと、掃除することもできません。汚れを予防する工夫や掃除の技術は、「暮らしていれば、必ず汚れる」という前提の下にあることを肝に銘じておきましょう。
居心地のよさをつくる掃除
今送っている毎日は、いつか思い出になります。だったら、「汚して怒られた」記憶より、「汚して、みんなで掃除したけど取れなくて…。そうそう、あのときママったら…」という微笑ましいエピソードの方が良いと思いませんか?親子でストッキングを編んだ、窓を拭いたなどのささやかな思い出も、いつかふと懐かしむ日が来るはず。その一つ一つが、おうちの歴史、おうちへの愛着になっていきます。
さらに「汚れやゴミは家族の健康のバロメーターでもあるんです」と木下さん。確かに、鼻をかんだティッシュがたくさんあれば「風邪気味かな?」と気づきますよね。個室を持っているお子さんなら、片付けの様子で精神状態もなんとなく分かります。
もっと言えば、一緒に掃除をしていたら、家族が思わぬ悩みを打ち明けてくれることだってあります。部屋がキレイに居心地よくなる様子を見ていると、自分の心もすっきりさせたくなるのかもしれませんね。

「お掃除はコミュニケーション。単なる『キレイ』がゴールではありません」と、木下さんは力を込めます。「『キレイ』の奥にある愛情や思いやりを伝えるためにこそ、お掃除はある。そのことを忘れずに、新築したおうちを居心地の良い『わが家』へ育てていってください」。
どんなときも「おかえりなさい」と迎える気持ちをカタチにする。それが、掃除の極意なのかもしれません。
取材ライターのつぶやき
木下さんのお話を伺いながら、家族がニコニコ笑って暮らしている風景が心に浮かびました。掃除って、とにかくピカピカにすることが目的だと思っていたけれど、ちょっと違うのですね。自分と家族を慈しむ気持ちを感じながら、言外のコミュニケーションをじっくり味わう…。掃除の新たな一面を発見した、目からウロコの取材でした。
今回のSpecialist
日本清掃収納協会認定講師 清掃マイスター1級
木下衣子(きのした きぬこ) さん

「認定講師」資格を持つ清掃マイスター。
「掃除はコミュニケーション」を合言葉に、おもてなしの心が伝わる、効果的なお掃除の方法を教えています。自身の子育て後、清掃マイスターをはじめキャリアコンサルタントやマナー講師などさまざまな資格を取得。幅広い知見と豊富な話題で彩られた講座が人気です。
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