生活者にとって怖いものの一つは、いわゆる「空き巣」などと呼ばれる住宅侵入盗。家の中にある大事な財産を奪われてしまい、時には家主や家族が危険な目に遭うおそれも。招かざる相手の侵入をできるだけ防ぎ、盗難被害から自分たちの身と財産を守るには、いったいどうすればよいのでしょうか。
日本防犯設備士協会認定の総合防犯設備士である藤滿弘さんによると、侵入犯罪防止のための基本4原則があるとのこと。これを守っている家は、住宅侵入犯が「侵入しにくい」と判断し、侵入行為をあきらめる傾向にあるそうです。
「音」で守る
「住宅侵入犯罪を防止するのに有効な4原則を知っておいてください。それを家の守りに用いることは侵入の抑止につながります」と、藤滿さんは説きます。
「まず一つ目は、『音』による侵入防止。住宅侵入盗は警報音などの大きな音を嫌がりますから、音の効果で侵入をあきらめさせることが可能です」
音による防犯対策としては、以下のようなものがあります。
・警報装置の設置
・歩くと大きい音が出る玉砂利(防犯砂利)を建物の周囲に敷く
・よく吠える犬を飼う
・窓にセンサーを付ける
・防犯ブザーを持つ上記の、大きな警報音が出る「防犯ブザー」は、外出中の児童が持ち歩く物として知られていますが、侵入盗犯罪から身を守るのにも効果的。家に備えておくとよいでしょう。

「時間」で守る
「二つ目は、『時間』による侵入防止。つまり、建物への侵入までに時間がかかる状態にしておくことが重要です。多くの住宅侵入盗は、5分以上かかる場合、侵入をあきらめるといわれています」
侵入までの時間をかけさせる防犯対策としては、以下のようなものがあります。
・1枚の扉に2個以上の鍵を取り付けるワンドア・ツーロック
・こじ開けを防ぐガードプレート、サムターンカバーによる玄関扉の補強
・防犯ガラス、防犯フィルム、補助錠による窓の補強
・風呂場やトイレの窓は強固な面格子を設置して補強
上記にある玄関扉のサムターン回し(鍵の開閉ツマミを扉の外側から動かして侵入する手口)防止カバーなどの防犯部材、防犯グッズは「防犯その4」で説明します。

「光」で守る
「三つ目は、『光』による侵入防止です。侵入者は、住宅侵入を試みる際はかなりの緊張状態にあるため、急に光を当てられるとひるみます。とくに日没後に明るく照らされれば、暗がりの中で自分の姿が明るく浮き上がってしまうため、正体がばれたくないという気持ちになるようです」
戸建ての場合、光による防犯対策としては、以下のようなものがあります。
・防犯灯(外灯)の設置
・近づいたら点灯するセンサーライトの設置
・通路などはできるだけ照明の死角がないようにする
近年は、屋外のライトに連動した警報装置なども開発されています。

「目」で守る
「四つ目は、『目』による侵入防止です。侵入者は、自分が監視されているとわかると、侵入をあきらめる傾向にあります。」
監視による防犯対策としては、戸建ての場合、以下のようなものがあります。
・侵入者の顔、姿、行動を記録する防犯カメラの設置
・テレビモニター付きインターホンの設置
・ご近所による見守り
とくに「ご近所による見守り」は、侵入を試みようとする者に「直接見られてしまった」と思わせる効果があります。日頃からの近隣住民間の連携、不審者への声掛けは大切です。
「侵入防止4原則の『音』、『時(時間)』、『光』、『目』ですが、それぞれをかなで書いたときの頭文字をつなげて『お・と・ひ・め(乙姫)』と覚えると忘れにくいです」
次の「防犯その3」では、侵入盗に狙われにくい家にする、建物の外周りに関する工夫を紹介します。

取材ライターのつぶやき
「侵入防止の4原則」は、住宅侵入犯の心理をうまく利用した対策ですね。お話をうかがった藤滿さんは、講演の来場者などに伝わりやすいように「おとひめ」と伝えているとのことでしたが、言葉に向き合って仕事をしているライターとしては、住宅侵入盗の不気味でコワいイメージと、「乙姫」という愛らしいワードの響きに、ギャップを感じて、かえって内容が印象に残りました。
今回のSpecialist
公益社団法人日本防犯設備士協会認定 総合防犯設備士
藤滿 弘(ふじみつ ひろむ) さん

特定非営利活動法人福岡県防犯設備士協会事務局長。
総合防犯設備士の資格のほか、福岡県警察と特定非営利活動法人福岡県防犯設備士協会が委託する「防犯設備アドバイザー」の資格を保有。「安全・安心なまちづくり」を目指し、講演、テレビ出演、防犯診断、防犯設備の設置指導等を通じて、生活者の防犯意識向上のための活動をおこなっている。
http://www.fukuoka-bosetsukyo.jp/

