災害が起きて、電気や水、ガスが止まった状況を想像したことはありますか?その日のために防災グッズを用意していても、実際は一度も使ったことがない…という人も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、日本防災士機構認定の防災士である古賀由布子さんに、ライフラインが止まったときに役立つものや、身近なものを活用するアイデアについて教えてもらいました。大切なのは「防災だから」と身構えすぎないこと。普段の暮らしの延長線上で災害時の生活を想像し、準備することがポイントです。
ライフラインが止まったときに役立つもの

災害が発生した際には、電気やガス、水道などのライフラインが止まったり、物流が機能しなくなったりする可能性があるため、食料や生活用品などの備蓄が必要です。
そこで、家に備えておきたいアイテムをご紹介します。
<家に備えておきたいアイテム>
■飲料水(1人1日3リットル)
■食品(お米やパンのほか、サバ缶やツナ缶などの缶詰類)
■生活用水(お風呂に水を張っておく、水道水を入れたポリタンクを準備)
■ティッシュペーパーやトイレットペーパー
■人数分の懐中電灯やヘッドライト
■ポータブル電源(スマホや照明器具、家電に利用)
■モバイル充電器(電池式)
■手動式ラジオ
■カセットコンロとガスボンベ
■非常用トイレ
■小銭・紙幣(停電時には電子マネーがつかえなくなります)

「カセットコンロとガスボンベ」は、お湯を沸かしたり、温かい食事を作ったりでき、非常時の生活水準を大きく向上させてくれます。
「最大火力で使うとガスボンベ1本で約60分燃焼可能です。1〜2人で1日1本が目安でしょうか。特に冬だと、温かいものを食べられることは、単に空腹を満たす以上の意味があります」と古賀さん。コンロやボンベは使用期限もあるので、普段の生活で使いながら補充する“ローリングストック”を心がけましょう。
また、防災グッズを選ぶときは電気や水を使わず、それ単体で役割を果たせるものかどうかが重要です。「夏の暑さ対策では、冷却タオルや電池式の扇風機を。冬の寒さ対策では使い捨てカイロやエマージェンシーシート(アルミのブランケット)が有効です。特にエマージェンシーシートは、直射日光も防いでくれるので、夏も活躍しますよ。叩くと冷たくなる冷却剤も効果的です」。
<POINT>
電池で動く機器なら、最長の稼働時間まで確認しておくと安心です。
まずは「3日間の生活」を具体的に考える
災害への備えを考えるとき、「どのくらい用意すればいいの?」と迷う人も多いでしょう。古賀さんに尋ねると、目安にすべき日数は「3日分」だそうです。
「災害の規模や被災した地域にもよりますが、一般的にライフラインの復旧や救援物資の到着まで最低3日かかると言われています。まずはその3日間をなんとか生き延びることを目標に、準備しましょう」。
ここで大切なのは、「3日分あれば大丈夫」と漠然と考えるのではなく、自分の家庭が3日間生活するなら何が必要なのか、具体的に想像すること。朝起きてから夜、眠りにつくまで、普段の行動を一つずつ整理すれば、自分にとって必要最低限なものが見えてくるはずです。
また、備蓄は自宅だけでなく、車などにも少しずつ備えておく「分散」もオススメです。
「家が使えなくなった場合、車が一時的な拠点になることもあります。ただ、普段から見えるところにあると嫌になってしまうので、かさばらない程度にしておきましょう」。
<POINT>
夏の車内は高温になるため、保管に向かないものも。気をつけて備蓄しましょう。
防災グッズは、一度使ってみよう
防災グッズを揃えたら「これでひと安心」と思ってしまいがちです。ですが、いざというときに使ってみると、「使い方がわからない」「思ったより使いにくい」「これだけでは足りない」ということに気付くケースが多いそうです。そこで古賀さんがすすめるのは、普段の生活やレジャーで防災グッズを使ってみることです。

例えば、災害時の備えとして欠かせないトイレ。緊急時、本当に使うことができるのか、使用後はどこに保管するのか、子どもでも使えるのかなど、想像するとさまざまな不安が頭をよぎります。「以前、携帯トイレを何種類か使ってみたんですが、一番気になったのは臭いでした。体験することで、携帯トイレと一緒に消臭スプレーの備蓄が必要だ、という気づきを得ました」と古賀さん。
意外と見落としがちなのが、「携帯トイレをどこで使うのか」ということ。自宅のトイレならまだしも、屋外や避難先ではプライバシーの確保が難しいことも。特に女性が屋外で携帯トイレを使うのは、かなりハードルが高くなりそうです。
「じゃあ、テントがあったら難しい場所でも使えるかもしれない。そんな風に『自分はどこでどう使うのか』まで視点を広げてみることも大切です」。
<POINT>
防災グッズを試して「使えた・使えなかった」という実感に加え、自分が使う場面まで想像すれば、備えの内容が自分仕様になっていきます。
普段使っているものを活用する
普段使っている日用品も、工夫すれば防災グッズとして代用できます。
おすすめの活用法をいくつか紹介するので、平常時に一度試してみましょう。
ツナ缶
油にたこ糸や紐などを通せば、オイルランプになります。
ポリ袋

①耐熱ポリ袋の中にお米と水を入れ、カセットコンロで沸かしたお湯で湯煎するとご飯が炊けます。
②懐中電灯やL E Dライトに、ポリ袋(白半透明のもの)を取り付けると、光が拡散するランタンになります(工事現場で見かけるバルーン型のライトと同じ仕組みです)
ペットボトル

懐中電灯をコップなどで固定し、その上に水の入ったペットボトルを置くと、光が水を通して広がるランタンになります(牛乳を数滴いれて水を白く濁らせると、さらに明るくなります)
古賀さんの一押しはワセリンです。「顔や体の保護だけでなく、きれいに洗浄した小さな傷のケアなどにも使えるため、持ち歩いていると便利です。避難時に最も多い肌トラブルは、湿疹やかぶれ、かすり傷の悪化など。ワセリンは保湿にも傷の保護にも使える万能アイテムなんですよ」と教えてくれました。
防災グッズは、「災害専用」にしてしまわず、普段から使う → 便利さを知る → いざというときにも使える。この繰り返しが、実際の防災につながっていきます。被災時に落ち着いて対応できるように、自分たちの暮らしに沿った防災を見つけていきましょう。
取材ライターのつぶやき
「防災グッズは買って終わりではない」、まさにその通りです。ライフラインが止まったら、3日間も暮らしていけるのか…不安しかありません。ですがそうした不安や疑問は実践して解消するしかないと思うので、小さな体験から始めてみようと思います。
今回のSpecialist
日本防災士機構認定防災士
古賀由布子(こが ゆうこ) さん

防災士、「Say!輪(セイリング)」代表。
「人と人との輪を紡ぐ」というテーマのもと、学び合いの場づくりを目的として2012年に任意団体「Say!輪」を設立。現在の活動の中心は『わかりやすく楽しい防災ワークショップ』。防災ワークショップでは、防災をきっかけに老若男女、多種多様な人々が相互理解を深める場を育むとともに、防災意識の啓発活動だけに留まらない、さまざまな地域課題解消のお手伝いにも取り組んでいます。
webサイトhttps://sayring.wixsite.com/2012

