【column】クリーニングの達人に聞く衣類ケア|洗濯の基礎知識

2025.12.17 | 暮らし全般

ケアしだいで、衣類の寿命は変わるもの。だからこそ、正しい知識を身につけておきたいですよね。そこで、「染み抜き相談所 ファミリークリーニング」の2代目で、クリーニング師の国家資格を持つ神林章二さんに、ケアのコツをお聞きしました。
第1回目は、知っているようで知らなかった“洗濯の基本”を教わります。

洗濯表示の見方


▲ほとんどの洗濯タグが衣類の左側についているのでチェックしてみて

洗濯表示は、2016年以降、国際規格に変更されたことから、わからないままになっている方も多いのではないでしょうか。「洗濯表示を覚えておいて損はありません。ポイントさえ押さえれば、あとは簡単な応用で記号の意味がわかります」と神林さん。この機会にぜひ覚えましょう!

<覚えておきたい5つの基本記号>

<POINT>
洗濯表示は5つの基本記号で示される。表示を確認して、適切に洗うことを心がけよう。

洗剤の選び方


▲中性と弱アルカリ性のほか、最近では除菌効果の高い弱酸性の洗剤も登場

洗濯用洗剤を選ぶとき、パッケージの裏の“液質”を見ていますか? 基本的に、洗濯用洗剤には、「中性」と「弱アルカリ性」のものがあります。皮脂や食べこぼしなど酸性の汚れを落とすことが得意なのは、弱アルカリ性。そのため、洗浄力で比べれば、弱アルカリ性のほうが優位にあります。

アルカリ性の強さは、pH(ペーハー)で表され、pH 7は中性。pH8〜11までが弱アルカリ性で、数字が大きくなるほど、アルカリ性の度合いが強くなります。その分、汚れ落ちもよくなりますが、 褪色が進んだり、皮膚に刺激を与えたりする可能性も。一般的には、液体洗剤には中性のものが、粉末洗剤は弱アルカリ性のものが多い傾向にあります。とはいえ、弱アルカリ性の液体洗剤や中性の粉末洗剤もあるので、表示を確認してみてください。

では、中性洗剤では汚れが落ちないのかというと、決してそうではありません。「ただ長く使い続けると、“白さ”の点で違いが出てきます。反対に色柄物は褪せにくい。一長一短があるため、汚れが多いなら弱アルカリ性洗剤、気にならないなら中性洗剤といった具合に、ご家庭の状況に応じて使い分けることをおすすめします」と神林さんは言います。

第三の洗剤として登場したジェルボールは、使用量の調整ができないのが難点ですが、洗浄力も使用感もよいので、洗濯量の多いときや時短を求める場合は、試してみる価値アリです。使うときは、最初にジェルボールを投入し、その上に洗濯物を入れると、溶け残りを防げます。「いまの洗い上がりに満足なら、そのままで大丈夫。ただ、汚れが取れない、白物が黄ばむといった悩みがあるのなら、パッケージ裏に書かれている“液質”を確認して、洗剤を選んでみるといいでしょう」と神林さん。

また、スポーツなどによる泥汚れにお悩みの場合は、泥が濡れていると落としにくいので、乾燥させ、叩いて泥を落としてから洗ってみて。アルカリ剤である「珪酸塩(ケイ酸塩)」配合の固形せっけんを使い、洗濯板や歯ブラシなどでゴシゴシとこすると、汚れ落ちがよくなります。汚れがついたら早く洗うことも、重要なポイントです。

<POINT>
弱アルカリ性の洗剤のほうが、汚れはよく落ちる。洗剤のパッケージ裏面にある表示で、液性を確認してみて。

洗濯機のコースはこう選ぼう

最近の洗濯機にはさまざまな機能がありますが、正しく使えていますか? 神林さんは「肌着や普段着、タオル類などは『標準コース』、色柄物や型崩れを防ぎたいデリケート衣類は『おしゃれ着コース(ドライコース)』、シーツや毛布などは『大物洗いコース』、この3つを覚えるだけで、洗い上がりがよくなります」とアドバイスします。

「バスタオルやパジャマは汚れないと感じるかもしれませんが、水分や皮脂汚れをエサとする雑菌が時間とともに爆増し、フンをする。そのフンが、臭いの原因になります。だから、絶対に毎日洗ったほうがいい。『スピードコース』だと、すすぎが少なくなるため、汚れの再付着が起こりやすくなり、くすみの原因になります。そのため、軽い汚れでも『標準コース』をおすすめしたい。スピードコースは、時間がないとき限定で使ったほうがいいと思います」と神林さん。

「おしゃれ着コース」では、「手洗い」表示のものが洗えます。洗うときには1枚で、最大でも2枚までで、それぞれネットに入れて洗ったほうがいいそうです。洗剤は、中性の液体洗剤を使用します。
「『おしゃれ着コース』は、使用水量も洗濯時の揺さぶりも少なく、洗濯時間も短い。それなのに洗濯物を多く入れてしまうと、繊維の中に水が浸透せず、汚れ落ちが悪くなる。だから、1枚洗いをおすすめします。ネットに入れるのは、摩擦による型崩れを抑えるため。そして、何より重要なのは、干し方です。ニットなど脱水しても水を多く含んでいる場合は、タオルで水分を吸い取って、形を整えてから平干ししてください」。

「大物洗いコース」の特徴は、洗濯やすすぎの時間が長いこと。そのため、寝具類についた汗や皮脂などの汚れをしっかり落とすことができます。
「大物も、風合いを保つにはネットに入れて洗ったほうがいいでしょう。こまめに洗うなら、液体洗剤で問題ありませんが、2か月に1回程度しか洗わないのであれば、粉末洗剤、できれば“除菌”と書かれているものがおすすめです。干すときは、できる限り折りたたまずに。スペースがなければ、大きめのハンガーを複数使ってジャバラのように干すなど、布どうしがくっつかないように工夫して干すといいですよ」。

洗濯機のコースを正しく選択するだけで、洗い上がりの満足感が増すのであれば、試さない手はありませんね。

<POINT>
洗濯するものに合ったコースを選んで、すっきり洗い上げよう! 

仕上がりに差が出る洗濯術


▲洗い方で仕上がりにも違いが出ると知っておこう

① 温水で洗う
45℃〜55℃の温水で洗うと、ひどい皮脂汚れも溶けやすくなり、すっきり白く洗い上げることができます。綿やポリエステル、ナイロン、白系の麻の素材なら、この温度で洗っても大丈夫。ウールは縮むので、温水はNGです。

② 襟など汚れが気になる部分には前洗いを
皮脂汚れに効果的な洗濯用の固形せっけんなどを塗りこみ、しっかりこすってから洗濯機で洗うと、襟汚れが気になりません。

③ 冬の下着は臭いやすいので早めに洗濯
インナーの素材にもよく使われるポリエステルは、静電気を帯びやすく、静電気を介して汚れを吸着します。そのため、皮脂汚れがつきやすくなり、時間経過とともに繊維のなかに浸透して臭いの原因になります。冬の下着こそ、早めに洗うことを心がけましょう。

④ 静電気防止に柔軟剤を活用
柔軟剤は、ふわふわ感が戻るだけでなく、静電気も防止します。ただ、使用量が多すぎると、衣類の吸水性を阻害したり、洗濯機に成分のシリコンが溜まったりしてよくないため、メーカーの規定量を守りましょう。

⑤ プリントのある服にアルカリ洗剤を使わない
アルカリ性の洗剤で洗うと、プリントがはがれやすくなります。そもそも、プリントの寿命は3年程度といわれていて、長持ちしにくいのが実情です。アルカリ性の洗剤や漂白剤で劣化を早めることがないよう、洗う際には注意が必要です。

⑥ 形を整えて風通しよく干す
洋服を干すハンガーは、厚みがあり、肩幅に合ったものを選ぶことで、型崩れを防止できます。ハンガーとハンガーの間は、拳1つ分以上空けて干しましょう。

<POINT>
ひと手間で、洗い上がりに差がつく。洗濯回数を重ねるほど、違いは大きくなると心得よう。

取材ライターのつぶやき

洗剤の性質なんて、気に留めたこともなかった私。表のパッケージで商品を見比べていましたが、見るべき表示は裏面にあるのだと知りました。生活がある限り、洗濯は続くからこそ、そのコツをしっかりマスターしたいと思います。

今回のSpecialist 神林 章二(かんばやし しょうじ) さん

クリーニング師の国家資格を持つ。東京・麻布の高級店で修行したのち、北九州市の「染み抜き相談所 ファミリークリーニング」の2代目に。卓越した技術と丁寧な仕事ぶりで、お客様の期待に応える。襟汚れやがんこなシミを除去する「とろ〜り」、何でも洗える「これだけ洗剤」といったオリジナル商品も展開。ブログでは、洗濯や衣類収納のコツを紹介する。


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