ケアしだいで、衣類の寿命は変わるもの。だからこそ、正しい知識を身につけておきたいですよね。そこで、「染み抜き相談所 ファミリークリーニング」の2代目で、クリーニング師の国家資格を持つ神林章二さんに、ケアのコツをお聞きしました。
第2回目は、 自宅洗いが難しい衣類を上手にケアし、保管する方法をご紹介しましょう。
自宅で洗えないものとは
▲このマークがあれば自宅での洗濯NG
洗濯表示に「桶の記号に×」があれば、「水洗い不可」を意味します。シルクやウール、カシミア、レザーのような素材が代表格。綿や麻など一般的には洗える素材であっても、「洗濯不可」の表示があるケースも。そんなとき、「手洗いなら大丈夫かも」と試してみたくなりますが、絶対にやめておいたほうがいい場合があると、神林さんは言います。
「カシミア、レザー、合皮は、絶対に自宅で洗わないほうがいいですね。ウールが50%以上入っているものも、避けたほうが無難。また綿や麻であっても、色鮮やかな洋服であれば、色褪せのリスクが高い。特にヨーロッパ製のブランド品は、色が落ちやすい。長く着ようと思うなら、クリーニングに出したほうが安全です」。
自宅洗いで衣類を劣化させてしまう原因の一つに、洗濯時の摩擦があります。シルクやウールは、摩擦でこすれると白っぽく毛羽立ったり、縮んだりします。自宅洗いにチャレンジするのであれば、摩擦が起きないよう1枚ずつ、たっぷりの水量で、軽く押し洗いすることが基本。水温は、20〜30度で。脱水は、手で軽く押すか、洗濯機を使うなら2、3回転させる程度にとどめましょう。残った水分は、タオルを押し当てて優しく取り除きます。アイロンをかけるときも、細心の注意が必要です。シルクにスチームはNG。半乾きの状態で、当て布をして裏側から低温でかけます。ウールは、中温でスチーム機能を使って。どちらも、アイロンをかけた後は、平らなところで熱を冷ますと、シワを防げます。
「万が一、自宅洗いで失敗しても、クリーニング店で修復できることがあります。ただし、失敗を繰り返した衣類や乾燥機にかけて縮んだものは、修復不可能。1回目の失敗時に持ち込めば、対応してくれるお店もあるので、相談してみるといいでしょう」。
なんと、クリーニング店にそんなサービスがあるとは! あきらめる前に、プロに頼ってみることをおすすめします。
<POINT>
「洗濯不可」表示の衣類を自宅で洗うときは、摩擦を与えないようにして洗うことが大原則。
着用後のケアで寿命をのばす

▲着用後のブラッシングを習慣にしよう
大切な衣類を長持ちさせるヒケツは、着用後のブラッシングにあります。「たったそれだけ?」と思われるかもしれませんが、ブラッシングの効果は高いと、神林さんは言います。
「表面についたホコリは、着用を重ねると繊維の奥に入り込んでいきます。ホコリが溜まると、虫食いやカビの原因になり、臭いが発生することも。こうしたトラブルを避けるために、着た後は必ず繊維の目に沿って広範囲にブラシをかけ、付着したゴミや花粉を取り除きましょう。こすれて絡まった繊維を正しく整えることもできるので、毛玉予防にもなります。ダウンやレザーにも、ブラッシングは効果的です」。
袖口などの汚れが気になるときは、ブラッシングでホコリを落とした後に、しっかり絞った濡れタオルでトントンと叩いてみて。このときお湯を使うと、より効果的です。すすぎ不足だとシミになるので、洗剤を使うのは避けましょう。濡れタオルの後は、乾いたタオルでトントンと叩き、水分を取り除いてください。ダウンは、水分が羽毛に浸透すると乾きにくくなり、カビなどの原因になります。表面の生地だけにアプローチするようにしましょう。
消臭スプレーは、シミの原因になることがあるので、かけ方には十分な注意が必要です。
「消臭剤には界面活性剤が入っているため、多くつくと輪状のシミになりやすい。予防するには、洋服との距離を離してスプレーし、消臭剤が霧状に広がるようにしてみてください。先に裏面で試して問題ないのを確認してから、表面にスプレーしたほうがいいと思います」。
<POINT>
着用後は必ずブラッシングして、衣類を風合いよく清潔に保とう。
スーツのシワ対策

▲ジャケット、スラックス、ワイシャツは別々のハンガーで管理
スーツは、シワのない状態でかっこよく着こなしたいものです。着用後は、上から下へ繊維の流れにそってブラシをかけ、ジャケットは肩幅に合ったハンガーに、スラックスは専用のハンガーにそれぞれかけて保管しましょう。スラックスには、センターに「プリーツライン」という折り目があります。この折り目を合わせたうえで、裾からつるして。そうすれば、ウエスト側の重みで自然にシワがのびます。
出張などで持ち運ぶ場合は、折りたたまずに収納できる「ガーメントバッグ」を使うのが一番ですが、バッグなどに入れるのであれば、たたみ方に注意しましょう。
たたむときは、平らで、スーツを十分に広げられるスペースを確保してください。スラックスは、プリーツラインをぴったり合わせてから、三つ折りに。ジャケットは、前ボタンをすべて留め、ワイシャツをたたむ要領で、なるべくシワが寄らないようにたたみます。
ホテルに着いたらすぐハンガーにかけ、入浴後のバスルームに2〜3時間程度つるしておくと、湿気でシワがのびます。このとき、換気扇は必ず回して、スーツが湿りすぎないようにしてください。
スチームアイロンを貸してくれるホテルもあります。スチームアイロンをかけるときは、ハンガーにかけたまま、ジャケットの袖や裾を引っ張り、生地をピンと張ってからスチームを当てます。ポイントは、スチームをかけた後、「ふーっ」と息を吹きかけて、湿気と熱を飛ばすこと。そうするとシワのない状態が固定されます。
スラックスも、ハンガーにかけた状態で、遠目からスチームを当てます。
「スラックスは、プリーツラインが命。ここに蒸気が入りすぎると、ラインがぼやけるので気をつけて。ラインがずれた状態で保管すると、余計な折り目がついてしまいます」と神林さん。シワをすっきり伸ばして、出張先でも気持ちよくスーツを着たいものです。
<POINT>
スーツのシワを取るには、シャワー後の浴室につるしたり、スチームアイロンをかけたりと、蒸気を利用しよう。
季節ものの保管ポイント

▲よい状態で着るために、シーズン後だけでなく着る前のクリーニングも効果的
シーズンが終わったら、クリーニングに出してから収納しましょう。特に、雨や雪で濡れたダウンやコートは、そのまましまうとカビが生えやすいので、洗ってしっかり乾かすことが大切です。
保管するときは、ハンガーにかけ、風通しよくしたほうがトラブルを予防できます。押入れに収納するなら、下段よりも上段で。衣装ケースに入れるときは、底に新聞紙を1枚敷いておくと、湿気を吸収し、インクが防虫効果を発揮してくれます。ただ、インク移りの可能性があるため、新聞紙の上に白い紙などを敷くといいでしょう。また、底の新聞紙は、クシャクシャにしてから広げて敷くと、表面積が広がって除湿効果が高まります。ときどき取り替えれば、さらに効果的です。
「しまいっぱなしだと湿気が溜まりやすいので、たまに風に当てるのがベストです。それが難しい場合は、必ず除湿剤を入れて、湿気対策をしてください」と神林さん。
シワや型崩れが気にならないものであれば、圧縮袋で保管するのも一つの手。酸素がなければ、カビや虫の発生を防ぐことができます。
防虫剤もマストですが、選ぶときには、においがないものがいいそうです。
「成分が異なる防虫剤を併用すると、ガスが発生し、衣類の変色につながることがあります。“においがないもの”という視点で選ぶと、失敗しません」。
防虫剤の成分は、上から下にしか流れないため、衣装ケースや引き出しに入れるときは、必ず防虫剤を一番上に置くようにしましょう。
<POINT>
保管時には、除湿剤と防虫剤でトラブルを防ごう。防虫剤は、必ず一番上に置くようにしよう。
取材ライターのつぶやき
ウール100%を自宅で洗って、縮ませた経験を神林さんに話すと、「ウール50%以上は冒険しないほうがいい」とのお答えが。失敗の原因は洗い方ではなく、素材の特性にあったようです。そして何より驚いたのは、クリーニング店でなら縮んだ服を元に戻せるかもしれないということ! プロの技術はやっぱりスゴイと感動しました。
今回のSpecialist 神林 章二(かんばやし しょうじ) さん

クリーニング師の国家資格を持つ。東京・麻布の高級店で修行したのち、北九州市の「染み抜き相談所 ファミリークリーニング」の2代目に。卓越した技術と丁寧な仕事ぶりで、お客様の期待に応える。襟汚れやがんこなシミを除去する「とろ〜り」、何でも洗える「これだけ洗剤」といったオリジナル商品も展開。ブログでは、洗濯や衣類収納のコツを紹介する。
ブログhttps://familycleaning.jp/category/cleaning-blog/


