「染み抜き相談所 ファミリークリーニング」の2代目で、クリーニング師の国家資格を持つ神林章二さんに教えてもらうメンテナンス術。第3回は、やり方がわからない身の回り品のお手入れ法についてお尋ねしました。
靴編

▲どんな素材の靴でも、ブラッシングがお手入れの基本
靴の汚れを落とす
靴に使われている素材を大きく分けると、レザー、スエード、合皮、キャンバス地の4つになります。すべての素材において、お手入れの基本はブラッシングです。習慣的にブラシをかけるだけでも、履いたときの印象がよくなります。
レザーの靴は、お手入れしないと乾燥で劣化を早めるので、月に1回程度のメンテナンスがおすすめです。専用クリーナーで汚れを落としたあと、栄養クリームを薄くぬって全体にのばし、キメの細かいクロスで拭き上げるとツヤが戻ります。
スエードは、ブラッシングだけでも十分ですが、専用の栄養スプレーなども市販されているので、使用するとよい状態をキープできるでしょう。
合皮は、水に濡らし固く絞った布で汚れを取ったあと、乾いた布で湿気を取り除きます。光沢を維持するために、レザーと同じケアも効果的です。
キャンバス地は、唯一水洗いできる素材。そこで、洗い方のコツを神林さんに教えてもらいました。
〈キャンバス地の靴を洗うときのポイント〉
①素材の確認
装飾に革など別素材が使われている靴は、水洗いをしないほうがいいでしょう。
②使用洗剤
生地が分厚い分、かなりの汚れを吸着しているため、弱アルカリ性洗剤の使用がおすすめ。40度程度の温水を使うと、さらに効果的です。ブラシでゴシゴシと洗ってください。ただし色柄ものは、褪色の恐れがあります。
③すすぎ \ point! /
バケツに水を注ぎながらジャブジャブと、5回は水を取り替えてすすぎます。洗剤成分が残っていると、干している間に紫外線と反応して、黄ばんでしまうことがあるので「これでもか!」というくらい、徹底的にすすいでください。
④早く乾かす
風通しと日当たりのよいところで、内側までしっかり乾かしましょう。
「最近の靴は、素材も複雑になっています。スニーカーに革が使われていることもあり、高価なものも多い。靴もクリーニングに出せますので、ご相談ください」と神林さん。大切な靴は、無理せずプロに任せたほうがよさそうです。
靴の管理
気になる靴のにおい消しには、靴用の消臭スプレーが効果的です。併せて、履いていないときの湿気対策も重要だと神林さんは言います。
「活性炭やウッドチップが入った靴用の除湿剤や乾燥剤を利用して、湿気がこもらないようにするといいですね。靴用のものであれば、シューキーパーの役割も果たして型崩れも防げます」。
靴を履く前には、防水スプレーを施すと、水や汚れをはじいて、靴を長持ちさせることができます。スプレーするときは20㎝程度離して、全体に均一にかけてください。スプレー後は、風通しのよいところでしっかり乾燥させましょう。
<POINT>
靴を美しく保つには、ブラッシングと湿気対策が大切。汚れがひどいときや素材が複雑なときは、クリーニング店に相談しよう。
バッグ編

▲毎日使うバッグこそ、適切なケアで長く愛用したい
バッグは、素材によってお手入れ方法が異なります。ナイロンやポリエステルなど化学繊維であれば、わりと簡単。液体の中性洗剤(おしゃれ着用)を水で薄め、そこにタオルを浸して固く絞り、生地を叩くようにして汚れを浮かせていきます。その後、真水に浸し固く絞ったタオルで軽く拭き取ると、汚れが落ちてスッキリします。水に洗剤を多く入れると、すすぎきれなくなるので、少量にしてください。
「基本的に、バッグは丸洗いするように設計されていません。型崩れなどのトラブルを防ぐためにも、叩き洗いを試してみるといいですよ」と神林さんはアドバイスします。

帆布製のバッグも、丸洗いは禁物です。このタイプは、ブラッシングがお手入れの基本。「パラフィン加工」という防水加工を施してあることが多いため、水の使用は避けたほうがいいでしょう。持ち手の汚れが気になるときは、化学繊維のバッグと同じ要領で汚れを取り除いてみてください。
合皮や革製のバッグは、汚れがシミとして残りやすいので、なるべく早く拭き取ることが肝心。いまは革の種類も豊富で、お手入れ方法もそれぞれ異なります。デリケートな素材も多いので、購入するお店でメンテナンス方法まで確認することをおすすめします。
<POINT>
化学繊維や帆布など洗えそうな素材でも、型崩れを防ぐため丸洗いは控えておこう。
帽子編

▲帽子の内側にある“すべり”のお手入れがポイント
麦わらやニットなど帽子も素材が多様ですが、やはりお手入れの基本はブラッシングです。繊維の方向にブラシをかけ、ホコリや花粉などの汚れを取り除いてください。

内側は、 “すべり”と呼ばれるテープ状のパーツについた汚れを叩き洗いで取り除きます。中性洗剤(おしゃれ着用)を薄めた水をタオルに含ませて固く絞ってから、トントンと叩いて汚れを浮かせ、真水に浸したタオルを固く絞って、同じように叩いてすすぎます。これを2、3回繰り返して、完全に洗剤の成分を取り除くようにしましょう。
「“すべり”には、汗や皮脂、ファンデーションの汚れがつくので、対策として市販の汗取りシートを利用するのもおすすめです。使い捨てなので、衛生的ですよ」と神林さん。特に夏の帽子は汚れやすいので、こうした工夫も取り入れたいものです。
丸洗いできる帽子もあるので、洗濯表示を確認してみましょう。

「桶」のマークなら、洗濯機で洗えます。マークの下にラインがあれば、「おしゃれ着コース」で。「桶に手」があるマークの場合は手洗いで、水温は40度が上限。マークの下にラインがあれば、水温の上限は30度です。洗剤は、液体の中性洗剤(おしゃれ着用)を使います。
ただし、キャップの場合、「つば(ブリム)」の芯がプラスチックなら洗えますが、厚紙の場合は水につけると型が崩れ、修復できません。つばを軽く叩いて、「コンコン」と硬い音がすれば、プラスチックの可能性大。しかし判断がつかない場合は、洗わないほうがいいでしょう。
「型崩れを防ぐには、ザルにかぶせて洗うという手もあります。中性洗剤(おしゃれ着用)を入れたバケツのなかでブラシを使い、全体をやさしく洗ってください。洗剤が残るとシミになるので、2回ほどしっかりすすぎ、タオルで水分を拭き取って、ザルにかぶせたまま風通しのよい日陰に干します。キャップのようなハリのある硬い生地でつくられた帽子を洗うときにおすすめです」。
また、洗濯表示に「◯」のマークがあれば、クリーニングに出すこともできます。特に、シーズンが終わったら汚れをスッキリ落として、次に備えたいものです。
<POINT>
帽子洗いのポイントは、“すべり”の汚れを落とすこと。丸洗いできる帽子もあるので、洗濯表示を確認しよう。
ぬいぐるみ編

▲ホコリっぽいときはブラシをかけるだけでも効果的
ぬいぐるみにも、洗濯表示がついています。まずはそれを確認しましょう。以下に挙げるぬいぐるみは、基本的に洗えません。
・接着剤を使用しているもの
・電池式のもの
・装飾が多いもの
・中綿にウレタンを使ったもの
※ウレタンは水で劣化しやすい。特に古いぬいぐるみにはウレタンが多いので要注意!
洗濯機OKであれば、洗濯ネットに入れて洗いましょう。特に汚れているところがあれば、その部分に中性の液体洗剤(おしゃれ着用)の原液を染み込ませ、こすり洗いしておくと、汚れ落ちに差が出ます。脱水しすぎると変形の可能性があるので、30秒程度にとどめて。水気が残っているときは、タオルを当てて水分を除去します。

手洗い表示なら、たらいのなかで押し洗いしてください。ぬいぐるみ全体が黒ずんでいるようなときは、お湯にアルカリ性洗剤を溶かして使うと、汚れ落ちがよくなります。1度できれいになった感じがしなければ、お湯と洗剤を入れ替えて、2度洗いするとかなり汚れを落とせるはずです。その分、すすぎもしっかりと。たらいに水を注ぎながら、3回以上水を入れ替えてすすいでください。脱水は、手で軽く押して絞ったあと、タオルドライで水分を吸い取ります。
干すときは、風通しのよい日陰で、平干しがいいでしょう。中綿が生乾きにならないよう、しっかり乾かすようにしましょう。
日頃のお手入れは、柔軟剤を水に薄め、タオルに含ませて固く絞り、ぬいぐるみの表面を拭いてみるといいそうです。「柔軟剤には、界面活性剤が含まれているので、表面の軽いホコリなら拭き取れますし、何より静電気を抑えて、新たなホコリをつきにくくする効果(汚れ防止)があります。 ただし、手垢などで黒ずみが気になるときは、柔軟剤ではなく中性洗剤(おしゃれ着用)を使ったほうが、スッキリ落ちますよ」と神林さん。こまめなケアで、きれいな状態を保ちましょう。
<POINT>
ぬいぐるみにも洗濯表示があるので確認し、汚れの程度に応じて洗ってみよう。
取材ライターのつぶやき
クリーニング店に出せるのは洋服や寝具だけだと思い込んでいましたが、靴やバッグなども持ち込めると聞き、驚きました。明らかに布製ではないスニーカーをどう洗うべきかと迷っていましたが、その手があったか!と膝を打ったしだいです。
今回のSpecialist 神林 章二(かんばやし しょうじ) さん

クリーニング師の国家資格を持つ。東京・麻布の高級店で修行したのち、北九州市の「染み抜き相談所 ファミリークリーニング」の2代目に。卓越した技術と丁寧な仕事ぶりで、お客様の期待に応える。襟汚れやがんこなシミを除去する「とろ〜り」、何でも洗える「これだけ洗剤」といったオリジナル商品も展開。ブログでは、洗濯や衣類収納のコツを紹介する。
ブログhttps://familycleaning.jp/category/cleaning-blog/

