【column】クリーニングの達人に聞く衣類ケア|シミ取りとプロの選び方

2026.01.14 | 暮らし全般

これまで3回にわたって衣類のケア方法をお伝えしてきた今シリーズ。最終回のテーマは、「シミ取り」です。家庭で漂白剤を使うときのポイントから、よいクリーニング店の選び方まで、今回も「染み抜き相談所 ファミリークリーニング」の2代目で、クリーニング師の国家資格を持つ神林章二さんにたっぷり教えてもらいました。

漂白剤の選び方


▲酸素系漂白剤は、つけ置き漂白にも向いている

家庭でのシミ取りは、漂白剤が効果を発揮します。家庭用に市販されているのは、「塩素系漂白剤(液体のみ)」と「酸素系漂白剤(液体・粉末)」ですが、使い分けが必要です。洗濯表示を確認し、「△」の記号があれば、漂白剤の使用はOK。ただし、△に斜線があると、塩素系は使用できないので、注意してください。

塩素系漂白剤とは
塩素系には、「まぜるな危険」の表示があります。必ず単独で使うようにしてください。漂白力が強いので、原液を使うのも危ない。生地を傷める可能性も高いため、規定量を水に薄めてから、白無地を漂白するときだけに使ってください。色柄物に使うと、色が抜けてしまいます。ふきんの除菌などキッチン周りに使うことも多いタイプですが、塩素系は薬剤の成分が残りやすいため、しっかりすすぐことも意識してください。

酸素系漂白剤とは
酸素系漂白剤には、弱アルカリ性の「粉末」と弱酸性の「液体」があります。粉末タイプは漂白力が強いので、白物だけに使用したほうが安心です。真っ白に仕上げるには、お湯を使うと効果的。白いシーツやタオルにもおすすめです。ただし、ウールやシルクなどの動物性繊維には使えないので、ご注意ください。
一方の液体タイプは、色柄物に適していて、使用すると色が一層あざやかになります。

「漂白剤を使用するときは、必ず規定量を守っていただきたい。慣れてくると、徐々に使用量が増えてしまいがちです。特に塩素系漂白剤はとても強力なので、十分に気をつけてお使いください」と神林さんからも注意喚起が! 正しく計量して使うようにしましょう。

<POINT>
塩素系漂白剤は、必ず単独で使うこと。酸素系の粉末タイプは白物に、液体タイプは色柄物に使用し、正しく計量しよう。

クリーニングの種類


▲クリーニングは「ドライ」と「ウエット」に分類できる

漂白剤を使用できない服や大事な衣類は、クリーニング店できれいにしてもらいましょう。洗濯表示に「◯」があれば、クリーニングに出すことができます。◯のなかにあるアルファベットは、クリーニングで使える溶剤を示します。
そもそもクリーニングには、種類があることをご存知でしたか? 「ドライクリーニング」と「ウエットクリーニング」があり、それぞれ得意分野が異なるので、違いを知っておくと目的に応じて利用できます。

ドライクリーニングとは


有機溶剤を使って衣類をきれいにします。水を使わないので、色落ちや型崩れを起こすリスクが低く、デリケートな素材にも対応できます。皮脂や化粧品など油性の汚れを落とすのは得意ですが、汗や食べこぼしなど水溶性の汚れは基本的に落とすことができません。

<ドライクリーニングに適した衣類>
・ウールやカシミア素材のもの
・シルク素材のもの
・スーツ
・ワンピース
・コート
・礼服など

ウエットクリーニングとは


プロの技術で、本来なら水が使えない素材を水洗いします。ドライクリーニングでは落とせない汗や食べこぼしなどのシミも、繊維の芯から汚れを分解し、洗い流します。より高い技術が必要になるため、対応していないお店もあり、料金もやや高め。ですが、満足のいく仕上りが期待できます。

<ウエットクリーニングに適した衣類>
・汗をたくさんかいた服
・汗ジミがある服
・食べ物や飲み物の汚れがついた服
「私の店では、基本的に1点ずつ、服の状態や汚れの程度を見ながら、専門的な技術を駆使してクリーニングを行っています。特にウエットクリーニングには熟練の技術が求められ、仕上げの工程も難しい。その分、仕上がりのすっきり感が違い、生地が持つ本来の軽やかさや柔らかさも戻ってきますよ」と神林さん。
クリーニング技術も、時代とともに進化しています。利用する私たちも知識をアップデートして、最適なサービスを選べるようにしておきましょう。

<POINT>
洗濯表示に「◯」があれば、クリーニングOK。ドライクリーニングとウエットクリーニングの特長を覚えて、上手に使い分けよう。

クリーニングに出す頻度とは?


▲クリーニング店のビニール袋を外してから収納しよう

どのくらいの頻度でクリーニングに出すべきか、悩んだことはありませんか? 頻繁に出しすぎても、生地を傷めるのではないかと心配になります。
「クリーニングでは、家庭の洗濯機よりもやさしく洗うため、生地の傷みを心配する必要はありません。それよりも汚れが蓄積することのほうが、生地へのダメージは大きい。服の寿命をのばすためにも、適宜クリーニングに出したほうがいいと思います」と神林さんは言います。

着用による汚れの程度は人それぞれで、衣類の種類やシーズン、着用時間によっても異なるため一概にはいえません。ですが、あえてアドバイスするなら、スーツやジャケットなどのアウター類は、夏物なら3回程度、冬物なら5、6回の着用で、クリーニングに出すのが理想的とのこと。
「汗がしみこむと、生地はゴワゴワに、硬く、重くなります。毎日の着用も、服を傷める原因になりますね。特に夏場、一日中履いたスラックスは汗をたっぷり吸収しているため、生地が硬くなってプリーツラインは崩れ、余計なシワがつきやすくなる。見た目にも、くたびれた感じになるので、3回程度着用したら、ウエットクリーニングに出したほうがいいでしょうね」。

そしてシーズン終わりには、収納する前にクリーニングへ。お店から引き取ったら、かかっているビニール袋から出して、収納しましょう。ビニールのままだと通気性がないため、カビや黄ばみの原因になります。また、長期間保管していた礼服などは、着る前にクリーニングに出すのもおすすめ。カビなどを除去することができるので、久しぶりでも気持ちよく着ることができます。

<POINT>
汚れがたまると、生地は劣化する。適宜クリーニングに出して清潔を保ち、愛着のある服を長持ちさせよう。

よいクリーニング店の見分け方


▲個人店では1点ずつ手作業で仕上げることも多い

ここまでクリーニングの優位点をお伝えしてきましたが、すべては信頼できるお店があってこそ。では、どんなお店を選べばよいのでしょうか。
まず、クリーニング店は「どこも同じではない」ということを知っておく必要があります。“安く、早く”を得意とするのは、大手チェーン店です。ただ、取り扱いできない製品があったり、細かい要望には応えてもらえなかったりするので、そこは承知しておく必要があります。
デリケートな素材や特殊な加工のある服は、個人店に任せたほうが安心です。高級ブランドも受け入れてくれるお店は、技術も高く、1点ずつ手仕事で細かいシミまで取り除いてくれます。
「『この素材だったらドライがいい』とか『この汚れには水洗いがいい』というふうに、状態を見て提案してくれるクリーニング店が、よいお店だといえます。質問に対して、きちんと返答してくれるかどうかも、チェックしてみてください」。

忙しいご家庭やご高齢世帯など、日中、店舗に行くことが難しい場合は、宅配クリーニングという手もあります。服の素材や用途に合わせ、クリーニング店を選んで利用すると、失敗も防げそうです。
気持ちよく着られなければ、おしゃれも台無しです。適切に衣類をケアして、ファッションを楽しんでいきましょう。

<POINT>
素材やシミの有無によってクリーニング店を使い分け、効果的な利用を心がけよう。

取材ライターのつぶやき

数年前、クリーニング店で初めて「ウエットクリーニング」を勧められたものの、まったくピンとこなかった私。取材を通して、ドライとウエットでは落とせる汚れが異なることを理解しました。職人さんは、1点ずつ、本当に細やかに目を配り、仕上げてくださいます。「ものを大切にする」という日本人の美意識を改めて感じる機会となりました。

今回のSpecialist 神林 章二(かんばやし しょうじ) さん

クリーニング師の国家資格を持つ。東京・麻布の高級店で修行したのち、北九州市の「染み抜き相談所 ファミリークリーニング」の2代目に。卓越した技術と丁寧な仕事ぶりで、お客様の期待に応える。襟汚れやがんこなシミを除去する「とろ〜り」、何でも洗える「これだけ洗剤」といったオリジナル商品も展開。ブログでは、洗濯や衣類収納のコツを紹介する。


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