【column】行事のある暮らしの楽しみ方|節分

2026.01.21 | 暮らし全般

時代の変遷とともに、ライフスタイルは多様化していますが、昔から脈々と伝わる年中行事の数々は、私たちの日々の暮らしに心地よさと彩りをもたらしてくれます。そこで、行事のある暮らしの楽しみ方を発信している「いとよし」代表 尾﨑美香さんにお話を伺い、今の時代に無理なく実践できる、年中行事の魅力をご紹介します。
第3回目のテーマは、現在も年齢を問わず馴染みの深い行事、“節分”です。

節分とは

節分といえば、毎年2月3日頃に豆をまいて邪気をはらい、「1年間、健康で幸せに過ごせますように」と願いを込める行事です。ご家庭で豆まきを楽しんでいる方も多いのではないでしょうか。日本人にはとても馴染みのある行事ですが、実は「節分」の発祥は中国。奈良時代に伝わり、平安時代に大晦日の邪気払いとして宮中で行われていた「追儺(ついな)」で鬼を退治した儀式が変化したものと考えられます。(諸説あり)

「もともと『節分』というのは年に4日ありました。「立春」だけでなく、「立夏」や「立秋」「立冬」の前日を指す、季節を分ける日なのです。中でも「立春」は新しい年の始まりとも考えられていた大事な日なので、この日だけが「節分」という呼び名になっていきました。年賀状で「初春」「新春」と書くのも、立春を新年と考えていた時の名残です。今は節分の方がメジャーに感じますが、元は立春の方が大切で、そのための準備の日が節分だったのです」と尾﨑さん。

立春前日の「節分」は、今でいえばお正月の前の大晦日のようなもの。新年を迎える前に厄を祓うという大切な行事が、現在も「節分」として脈々と続いているのです。

豆まき

節分の定番といえば「豆まき」です。病気や災害など、悪いものは全て“鬼”の仕業だと考えられており、鬼を退治するのに有効とされた「豆を打つ」風習が広がっていったのだとか。各家庭にそれぞれの「豆まき」スタイルがあると思いますが、一般的な豆まきの仕方をご紹介します。

1)福豆の準備

豆まきには、炒った大豆(福豆)を用意します。節分の夜まで、枡に入れて神棚に供えておくのが本来のやり方。神棚がなくても、目線の高いところに白い紙を敷いてお供えできるといいですね。

2)豆まきをする時間

鬼は丑寅の刻(午前2時から4時ごろ)にやってくるので、豆まきはできれば夜に行うのがベストです。

3)豆をまく

本来は一家の主人(家長)の役目ですが、年男・年女・厄年の人が豆をまく地域もあります。今や豆まきは楽しいイベントにもなっているので、家族全員、誰がまいてもO Kです。
家の玄関や窓を開けて「鬼は外!」「福は内!」と言って豆をまき、鬼が戻らないようにすぐ戸や窓を閉めます。奥の部屋から順番に鬼を追い出すようにして、最後は玄関までまきましょう。

4)豆を食べる

豆まきが終わったら1年の厄除けを願って、自分の年齢よりも1つ多く豆を食べます。これを「年取り豆」といいます。数が多くて豆が食べきれない場合は、福茶を飲む方法もあります(福茶とは、福豆3粒に昆布の佃煮か塩昆布、梅干し1個を入れたものです)。

<POINT>
節分は家庭だけでなく、地域によってもやり方が異なります。場所によっては鬼を悪者としないところもあり、必ずしも「鬼は外」と限らない地域もあるそうです。我が家のルールがあればぜひ受け継いでいきましょう。一度お住まいの地域の「節分」について調べてみると、面白いかもしれません。

恵方巻き

期限や発祥については諸説ありますが、大阪で“縁起担ぎ”として始まった「恵方巻き」。関西を中心に浸透していましたが、1998年に大手コンビニチェーンが全国販売をスタート。そこから一気に知名度が高まり、今では節分を行う家庭のおよそ半分は「恵方巻き」を食べているそうです。

「恵方巻き」を食べるときは、その年の恵方(縁起のいい方角)を向いて、願い事をしながら無言で一気に食べるのが良い、とされています(しゃべると運が逃げるのでNG)。また、「恵方巻き」には縁や福が巻かれているため、途切れないように包丁で切らず、丸ごと食べることが慣習となっています。食べ切れるよう、大きさは注意したいところです。

2026年の恵方は「南南東」、2027年は「北北西」です。スマホのアプリなどで方角をチェックしてから食べましょう。

<POINT>
一部の地域では、節分にいわしの頭をひいらぎの枝と一緒に飾る「柊鰯(ひいらぎいわし)」という風習もあります。ひいらぎのトゲといわしの匂いで鬼を追い払うというもの。「いわしの頭も信心から」ということわざも柊鰯から生まれました。いわしも行事食ですから、今年は恵方巻きとセットで食べてみませんか?

節分におすすめしたいこと


▲穴八幡宮の一陽来復御守。その年の恵方に向けて、特定の時間にお札を祀ります。

地域や家庭によって「節分」のスタイルはさまざまです。尾﨑さんは毎年、どんな節分を過ごしているのか伺いました。
「豆まきは毎年必ずやりますね。子どもの頃に祖父がしていたのを真似るようなイメージで、大きい声で「鬼は外〜、鬼は外〜、福は内〜、福は内〜」と言いながら張り切って家中の窓や玄関から豆をまきます。その夜、在宅している家族にも付き合ってもらいます。終わった後には年の数に一つ足した数を食べます。そろそろしんどいですね(笑)。

恵方巻きも作って黙々と食べます。そして24時には穴八幡宮(東京都西区西早稲田)の「一陽来復」のお守りを貼る、という3点セットが最近の節分の過ごし方です(一陽来復のお守りは、冬至から節分まで授与される金銀融通のお守りで、貼るタイミングが年に3日しかありません。興味のある方は調べてみてください)。

節分は『いい春を迎えるための祓いの日』。悪いものを追い出して、清々しい気持ちになるのが大切だと思います。大きな声を出して豆をまくご家庭は少ないかもしれませんが、とてもすっきりするのでオススメしたいですね。先ほどお話しした「一陽来復」のお守りを決まった日の決まった時刻にピシッと貼るのも達成感があっていいものです。

お寺さんの豆まきを見にいってもいいし、イワシを食べるのもいいですね。節分の日に子どもの頃の思い出があるというのは、大人になってからも嬉しいものだし、季節を感じられる日になります。日本らしいことを理屈抜きにして経験して欲しいなと思います」と尾﨑さん。

伝統行事を堅苦しく捉えるのではなく、昔から伝わる習わしの意味を知り、無理なくやれることに挑戦してみる、というスタンスが楽しめるコツかもしれません。


▲昨年完売したという人気商品!2026年版の「こよみものカレンダー」

「いとよし」では、立春から始まる二十四節気の「こよみものカレンダー」を制作しています。暦のことや行事、旬や季節を、知識としてではなく“生きた暮らしの中で楽しむもの”として捉えることができます。いろんな発見があり、行事や暦がより身近に感じられるはず。「節分」をはじめ、さまざまな行事を楽しみませんか?

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取材ライターのつぶやき

私の実家では真っ暗にした部屋の中で、父が豆だけでなくお菓子や紙に包んだ小銭をまきます。少しでも多く小銭を取ろうと、妹弟や従兄弟と争いながら拾っていました。本来の豆まきよりもエンタメ色が強めですが、今では私の子どもたちのお楽しみ行事に。これからもこのスタイルを受け継いでいこうと思います。

今回のSpecialist いとよし 尾﨑 美香 さん

行事と楽しむ暮らしを提案する「いとよし」代表。
大学卒業後、花王(株)にてコピーライター・クリエイティブディレクターとして化粧品や日用品のブランディングやコミュニケーション戦略に携わる。退社後、日本文化の学び直しを求めた「室礼三千」で行事の魅力を再発見し、2018年「いとよし」を立ち上げる。ワークショップ主催、メディアでの情報発信、田んぼと暮らしをつなぐ企画など、行事や暦のある暮らしの提案を行なっている。著書に「季節の行事といまどきのしつらい手帖」(エクスナレッジ)。TBSやJ-WAVE、雑誌「天然生活」などメディアにも出演。


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