家庭内事故を防ぐ、55歳からのインテリア|リビング・玄関編

2026.03.18 | 暮らし全般

高齢化社会の中で注目されているのが、家庭内の事故。以前は問題なくできた動作が加齢と共に難しくなることが、思わぬ事故やケガにつながることがあります。
インテリアコーディネーターの松本理絵さんは、作業療法士としての勤務経験に基づき家庭内事故を防ぐ「55歳からのインテリア」を提案しています。いつまでも安全に過ごせるわが家にするために、インテリアを見直してみませんか。

年齢とともに増える家庭内事故

毎日仕事や家事で体を動かしていても、体は少しずつ変化していくもの。独立行政法人国民生活センターの調査によると、家庭内でけがをした人は男女ともに75歳以上が多く、事故全体の約半数を転倒・転落が占めていました。

実際の事故事例

〈自宅内での転倒、転落〉
・風呂場で体勢を崩し、背部を打撲。肋骨を骨折。
・自宅内でスリッパが脱げ、靴下が滑って転倒。骨折。

〈調理中や入浴中のやけど〉
・夕食準備中、カーペットの盛り上がった縁に足を引っかけ転倒。石油ストーブの上に触れて、Ⅱ度のやけど。

〈洗剤や食料品等の誤飲・誤嚥〉
・自宅でうずら卵大のわらび餅を食べたとき、喉に詰まらせた。

※独立行政法人国民生活センターの調査より抜粋
高齢者の家庭内事故は単なる不注意が原因ではなく、筋力低下など身体機能の変化に伴って、歩行や食事、入浴などの日常動作で事故が起きやすくなることが特徴です。
「自分が高齢者になるのはまだ先だと思うかもしれませんが、皆さんも老眼や体力低下などの変化を感じたことはあるのではないでしょうか。『食事をこぼしやすくなった』『踏み台や脚立の上でバランスを崩しそうになった』など、ちょっとしたサインを見逃さずに早め早めに対策をしておく方がいいと思います」と松本さん。

point
・ラグやコード、スリッパなど、転倒につながるものに注意する
・体を支える場所をつくることを意識して、家具や補助的な手すりを用意する
家庭内の事故を防ぐために、インテリアを見直していきましょう。

室内での転倒を防ぐには


▲タイルカーペットの施工実例(松本さん提供)

フローリングに敷いたラグやカーペットの段差につまずいて転ぶ事故が毎年発生しています。転んだ先に家具や暖房器具があった場合は、さらに重いケガを負うことも。
居心地の良さをキープしながら、事故を防止するためにはどうすればよいのでしょうか。「マンションの床はフローリングが多いと思いますが、私はできるだけカーペットを全面に敷くことをおすすめしています。乳幼児編でも紹介したタイルカーペットは床全体に敷くことでスリッパを履く必要がなくなり、汚れた場所だけ取りかえることもできます。可能であれば、廊下までカーペット敷きにすると、寒さもシャットアウトできるためスリッパや靴下がなくても快適に過ごせます」。

椅子やソファは姿勢の維持をポイントに

年末年始に、高齢者がもちをのどに詰まらせる事故が毎年起きています。このような事故を防ぐためには、食事内容に加えて椅子やソファの座面の高さも大切なポイントです。
「まず、ダイニングチェアに座った時に足の裏が床にしっかりと着いているかチェックしてみましょう。足の裏が浮いている状態では上半身を支えにくくなるため、食べ物を飲み込みにくい姿勢になっています」と松本さん。おすすめは、軽くてしっかりとした骨組みのダイニングチェア。将来、足腰が弱くなった時にも背もたれを握って体を支えることができるからです。
「椅子を引かずに座れるという理由で、座面と背もたれが回転するタイプの椅子を選ぶ方もいます。しかし、実は高齢になると『立つ』『座る』などの動作をするたびに手で体を支える場所が必要になります。回転する椅子やロッキングチェアなど、不安定なものは使いにくく、危険なものになる可能性があることをお伝えしたいですね」
座面が低すぎるソファも、上半身が曲がることで空気や食物の通り道が狭くなってしまいます。立ち上がりやすさも考慮して、体に合った高さのものを選びましょう。

転ばぬ先の手すりを設置


▲玄関脇に設置した手すりの実例(松本さん提供)

安全に靴の脱ぎ履きをするため、玄関には手すりをつけておくのがおすすめです。
「手すりをつけるとインテリアから浮いてしまうと思われるかもしれませんが、いまはおしゃれな手すりも選べます。例えば、病院から退院して自宅に戻るタイミングで手すりを設置すると、見た目やデザインにこだわる余裕はないと思います。できるだけ早い段階で手すりをつければ、好みのインテリアを保ちながら転倒事故を防ぐことができます」
靴を履く場面では、若い年代の人も壁などに手をついている場合が多いそうです。壁の黒ずみ防止も兼ねて、早めに手すり設置を考えてみませんか。

取材ライターのつぶやき

不安定なダイニング椅子の上に立って電球を交換しようとする家族を見て、あわてて脚立を差し出したことがあります。年を取っている自覚はあるのに、気付けば若い頃と同じ行動をしていることは多いですよね。まずは床を這うコードやめくれたラグを整理して、すっきり暮らしたいなと思いました。

今回のSpecialist 松本 理絵(まつもと りえ) さん

「広島一敷居の低いインテリアコーディネーター」として、新築マンションの入居前内装、建売戸建ての窓施工含むコーディネート、一般・プロ向けのインテリア講座などで幅広く活躍。インテリアコーディネーター、二級建築士、作業療法士。


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