食事の支度や洗濯、掃除、子育てや介護。生活のあらゆるシーンで、さまざまな音が発生します。しかしマンションという環境では、それらの生活音が周囲の住戸に伝わって、トラブルに発展してしまうことがあります。響きやすい音を知ってあらかじめ防音対策をしておけば、皆が快適に暮らせる環境に近づくかもしれません。
そこで、防音関連グッズの企画・販売を行っている防音専門ピアリビング代表の室水房子さんに「マンションの防音」について聞いてみました。
第2回目は「生活音が気になったら 床編」です。
上階からの音はトラブルになりやすい?
「さまざまな防音グッズを使っても、残念ながら上階からの音は最も対策がしにくいものです」と室水さん。床に物を落したり、足音を響かせないように、集合住宅では特に気をつける必要があるそうです。
室水さん「足音や床の上に物が落ちる音は、マンションの構造体である床に直接響く固体音。特に、フローリングの床はカーペット貼りの床の約4倍、下階に音が響くといわれています。EVA製のジョイントマットやコルクマット、カーペットなどを敷いて対策している方も多いと思いますが、もっと音を防ぐためには、下地として振動を吸収するクッション性のあるマットを重ねるのがおすすめです。さらにジョイントマットなどの上に厚みと重量のある防音カーペットを重ねて敷くと、より効果が高まりますよ」

室水さん「ダイニングやソファの前なども音が響きやすい場所。ダイニングチェアの脚にカバーをつけたり、滑りを滑らかにするシートを貼ったりすると音が軽減します」
自宅のどこで音が出ているかを確認して、早めに対策しておきたいですね。
子どもの足音対策は?
子どもは体重が軽いから、足音は響かないと考えがち。でも、実際には足音が床に響きやすい歩き方をしていたり、興奮して走り回ったりするため、大人よりも子どもの足音が問題になるケースも多いそうです。下階からの注意を受けて、はじめて周囲に音が漏れていることに気づくこともあるとか。
室水さん「子どもの足音が響かないように対策する場合は、クッション性のある防音マットの上に防音カーペットを重ねる方がいいと思います。防音カーペットは、重量と厚みがとても重要です。防音タイルカーペットや防音ラグなど様々な種類がありますが、お子様の成長に合わせてなるべく広い範囲に敷くことをおすすめします」

▲カーペットの下に敷いて遮音する、3層構造の「足音マット」/ピアリビング
リビングや子ども部屋、寝室など、子どもは時間帯によって居場所と過ごし方が変わるもの。どこでどんな風に過ごしているかをよく考えて、防音対策をしたいものですね。
ペットを飼う場合の防音は?
ペット飼育可のマンションが増える中で、ペットの鳴き声や足音でトラブルになることも。室水さん「ペットの鳴き声が聞こえると指摘されても、どこから対策していいか迷うのではないでしょうか。まず、鳴き声は空気を伝わっていくため、音が漏れやすい窓に防音カーテンやすき間テープを使って外に音が漏れないようにする工夫が必要。ケージ飼いしている場合は、吠えている時だけ一時的にケージにカーテンや布をかける方法もあります」

足音については、子どもの場合と同じようにカーペットの下にクッション性のある防音マットを敷いて、フローリングに直接衝撃が伝わらないように対策する必要があります。
室水さん「部屋全体にカーペットを敷くのが難しい場合は、ソファの周りやキャットタワーの周囲など、よくペットが飛び降りたり走ったりして音を立てている場所から対策をしてみてはどうでしょう。ホームセンターなどで市販されているタイルカーペットはループパイルものが多いのですが、ペットの爪が引っかからないようにループがカットされたカットパイルの商品を選ぶと安心だと思います」
楽器の音は床から下に響いている
楽器の防音対策の中でも、最も相談が多いのがピアノの音。
室水さん「ピアノは脚の部分に防振ゴムを入れるといった対策をしていても、打鍵音と演奏音が床に響くため完全に下階への音を遮断する方法はありません。最も理想的な対策は、音源を囲む防音室を作ることです」
もし簡易的な防音をする場合は、空気音と固体音の両面で対策が必要。演奏する部屋の壁には防音材と吸音材を張り、窓には防音カーテンを。床は、防音マットとゴム製の遮音マットで二重に防音する方がいいそうです。
ピアノやドラムなどの振動を伴う楽器の下に敷き込むだけで床への音漏れと振動を軽減できる「ピアノ・ドラムステージ」という商品もあります。

▲ピアノ・ドラムステージ(簡易乾式二重床)」/防音専門ピアリビング
弦楽器や管楽器についても、防音室での演奏がおすすめです。組み立て式の防音室も市販されているそうです。

▲工具や道具を使わずにそのまま設置できる「組み立て式防音室」/ピアリビング
取材ライターのつぶやき
床の防音は下階ではほとんど対策ができないと聞いて、改めてお互いへの配慮が必要だと痛感。天井に何かつけて対策するのは、想像するだけで難しそうですよね。我が家があるマンションでも、日曜日の午後だけ上階のどこかからピアノが聞こえてくるのを思い出しました。今のところ時間帯も決まっているし音が気になるレベルではありませんが、なかなか言い出しにくいからこそ、できる限り防音をしておく方が良いのだろうなと考えさせられました。
今回のSpecialist
株式会社ピアリビング代表
室水房子(むろみずふさこ) さん

1993年創業当時から防音商品開発に取り組み、防音マット、防音カーテン、防音ボード等の防音商品を販売。かつて自身が音のトラブルに悩んだ経験から、生活する人の視点を重視し、DIY感覚で設置できる商品づくりやyoutubeなどを使ったわかりやすい情報発信を行っている。東京と福岡にショールーム開設。二級施工管理技士。
株式会社ピアリビング ホームページhttps://www.pialiving.com/

