【column】正しい対策でしっかり予防! 熱中症のウソ・ホント〈上級編〉

2025.07.16 | 健康・ペット

暑さも一段と厳しくなってきました。
メディアをはじめ、さまざまな場で熱中症予防が呼びかけられていますが、正しく対策していますか?
熱中症の対策法は、近年かなりアップデートされていて、ひと昔前とは違うことも多いのです。
そこで、覚えておきたい熱中症の知識を◯×クイズで出題。初級編、中級編、上級編の3回シリーズでお届けします。

最終回の今回は、<上級編>です。

熱中症対策とは?

熱中症を防ぐためには、毎日の心がけが大切。
「自分は大丈夫」という思い込みは持たず、毎日、気をつけるようにしましょう。

この暑さは近年、秋口まで続く傾向にあります。
ご自身はもちろん、大切なご家族の健康を守るためにも、“熱中症リテラシー”を高めて熱中症を予防しましょう。

では、クイズです。◯か×か、お答えください。

【第1問】熱中症予防には塩分補給も大切なので、夏場は普段から塩分多めの食事にするべき?

正解は×です。

汗には、塩分(ナトリウム)が多く含まれています。そのため大量に汗をかくと、体からは水分とナトリウムが同時に失われていることになるため、水分とともに塩分補給も大切です。
だからといって、事前に意識して塩分を多くとる必要はまったくありません。世界的に見ても、日本人の塩分摂取量は多く、食事で十分に摂取できています。そのため、夏に減塩生活を続けても、まったく問題はありません。

ただし、血圧が高めの方、心疾患や腎疾患、肝硬変など塩分制限が必要な方の場合、疾患の状態に応じて個別の対応が必要になるため、主治医にご相談ください。

ちなみに、暑熱対策には、ビタミンC、E、βカロテンなど、抗酸化作用のある栄養素が有効とされています。緑黄色野菜やフルーツ、ナッツなどを意識的に取り入れ、バランスのよい食事を心がけましょう。

<ワンポイント>汗をかくからといって、食事で塩分を多くとる必要はありません!

【第2問】手足が冷たければ、熱中症ではない?

正解は×です。

熱中症というと、体温が上がるイメージがありますが、脱水症状を起こしている場合は、手足が冷たくなることがあります。たくさん汗をかいて脱水状態になると、血液の循環が悪くなり、体温を調節できなくなるのがその理由です。“高体温ではないから、熱中症ではない”というのは、誤った認識だといえます。

人の体は、汗をかくことで体温の上昇を防いでいます。つまり、汗が出ている間は、体温が上がらないのです。一方、汗をかけなくなるほど脱水が進むと、体温は上昇しはじめます。 脱水があって、熱が高い状態なら、熱中症がかなり進行していると考えたほうがよいでしょう。

ただし、「熱中症=脱水症」ではありません。体にこもった熱を放散できない場合は、体温が上昇します。状態をよく観察するようにしてください。

熱中症は命の危険があるため、以下の場合はすぐに救急車を呼びましょう。
・意識障害(呼びかけに対する反応が悪いなど)
・自分で水が飲めない
・水分を補給しても症状が改善しない
特に、高齢者や小児、基礎疾患などがあって判断に迷う場合は、救急車を呼んでください。

<ワンポイント>体温にかかわらず、意識障害や自分で水が飲めないときは、迷わず救急車を!

【第3問】水分補給に、カフェイン飲料を常用するのはよくない?

正解は○です。

カフェインには利尿作用があるため、水分補給を意識して大量に飲んでしまうと、脱水を誘発する可能性があります。糖分の過剰摂取も脱水を起こしやすくするため、特に甘いカフェイン飲料は要注意。気分転換に1杯程度を飲むのであれば問題ありませんが、カフェイン飲料だけで水分補給をするのは望ましくないといえます。

ただ、カフェインを避けようとするあまり、飲むこと自体を控えてはいけません。ほかに飲料がないときの“つなぎ”など、常識の範囲で飲むぶんには影響がないので、神経質にならなくても大丈夫。
夏の定番、麦茶にはカフェインが含まれないので、暑い日の麦茶は理にかなっているといえます。

<ワンポイント>水分補給に、カフェイン飲料の大量摂取は控えよう!

取材ライターのつぶやき

“地球沸騰化”といわれるほど、世界中で気温上昇が続いています。環境そのものが変わってきているため、いままでと同じように過ごしていても、熱中症になる可能性は大いにあります。今回の記事をみなさまやご家族の熱中症予防にお役立ていただけると、うれしいです。

今回教えていただいた先生 北九州市立八幡病院 救急科部長 北村 拓也 さん

東京慈恵会医科大学医学部卒業。同大学病院救急科を経て、2025年より現職。


関連記事