知っておきたい親の介護予防|家族のサポートで認知症を防ぐ

2026.08.12 | 暮らし全般

最近、何度も同じことを言う、久しぶりに実家に帰ると部屋が散らかっていた……。高齢になった両親に、そんな変化を感じていませんか? 介護が必要になる主な原因の一つが、認知症です。とはいえ、もし認知症になったとしても、適切な治療と対策で進行や介護を緩やかにすることができます。元気でいられる時間をできるだけ長く保つために、子ども世代にできるサポートについて、保健師の前田祥衣さんにお聞きしました。

介護が必要になる原因とは?

厚生労働省の発表によると、介護が必要になる原因の第1位は「認知症」です。第2位「脳血管疾患(脳卒中)」、第3位「骨折・転倒」と続きます。

現在の介護度 第1位 第2位 第3位
要支援者・要介護者
の総数
認知症
16.6%
脳血管疾患(脳卒中)
16.1%
骨折・転倒
13.9%

資料)厚生労働省「国民生活基礎調査」2022年
「現在の要介護度別にみた介護が必要となった主な原因(上位3位)」

認知症とは、さまざまな脳の病気が原因となって神経細胞の働きが少しずつ低下し、記憶や判断力などの認知機能が衰えて、生活に支障をきたした状態をいいます。
では、認知症は予防できるものなのでしょうか?
「国は、認知症予防の基本的な考え方として、『認知症に “ならない”ことを目標にするのではなく、“なるもの”と考え、その進行を緩やかにすること』と示しています。完全に防ぐことは難しくても、ゆっくりと進行するなかで準備を整えたり、ご本人の希望をかなえたりしていけるといいですね」と前田さんは言います。

そこで大切になるのが、早期発見です。認知症になる一歩手前のことを「MCI(軽度認知障害)といい、この段階で発見できれば、適切な対策で健常な状態に戻る可能性があります。しかし、本人ではなかなか気づけません。家族がなるべく早く察知できるよう、普段から会話を心がけましょう。離れて暮らしているのであれば、定期的に電話で声を聞くなどの心配りも重要です。

<POINT>
介護原因の第1位は認知症のため、認知症の予防が介護予防につながります。認知症は、早期に発見し、治療することで改善が期待できるため、家族の協力が重要であることを知っておきましょう。

認知症の兆候

前田さんは、「ご本人の口から『最近もの忘れがひどくなった』というような言葉が出てきたら、かかりつけ医やもの忘れ外来に相談してみることをおすすめします」と言います。

客観的に見て「あれ?」と思う場面が増えたときも、相談や受診のタイミングです。
たとえば、

・何度も同じ話をする
・いままでのように効率的に家事ができない
・失くし物が増えた
・身だしなみに無関心になった
・外出をおっくうがる
・財布などが見当たらないことを人のせいにする

など、以前と比べて変化があれば、認知症の兆候である可能性があります。

「年相応のもの忘れであれば、ヒントがあれば思い出すことができますが、認知症の場合はそれが困難になります。といっても、その線引きは難しいものです。だからこそ、ご本人にもの忘れの自覚がある間に、ぜひかかりつけ医などへのご相談を検討されてください。もう少し進行すると、もの忘れがあること自体を忘れてしまい、ご本人が受診の必要性を感じにくくなります」と前田さん。

「年を取れば、忘れっぽくなるのは当たり前」と軽く考えたり、「もう年だし…」とあきらめてしまったりすると、認知症が進む可能性があります。受診のときは、家族も付き添ってあげると、ご本人も安心できるでしょう。

<POINT>
「もう年だから、認知機能が衰えて当然」ではありません。早いタイミングでの適切な対応・治療が、健康寿命を伸ばすヒケツです。

早期発見・治療のために

ここでは、認知症の相談ができる機関をご紹介します。

① かかりつけ医
認知症には、脳の病気が潜んでいます。できる限り早く発見し治療ができると、改善や進行が緩やかになる可能性も高まります。MCI(軽度認知障害)の段階なら、生活習慣での対策で改善が期待できます。かかりつけ医がいれば、まずは気軽に相談してみましょう。
② もの忘れ外来・認知症外来
内科や精神科などさまざまな病院で認知症の相談ができます。市町村のHPや「もの忘れ外来」「認知症外来」で検索してみてください。予約が必要な場合もあるため、受診の前に調べてみましょう。
③ 認知症疾患医療センター
認知症の相談や診察に対応する専門の医療機関です。地域の中核病院や総合病院に設置されているケースが多く、電話相談の窓口を設けている病院もあります。
④ 地域包括支援センター
「どこを受診すればよいかわからない」「病院はハードルが高い」と思うときは、地域包括支援センターに相談しましょう。地域包括支援センターは、市町村が設置する相談窓口で、中学校区につき1か所を目安に設けられています。専門のスタッフが対応してくれるため安心です。
「地域包括支援センターへの相談は、些細なことでも大丈夫。お話を聞いたうえで、受診先や支援の選択肢などを紹介して、最善の方法を一緒に考えていきます」と前田さん。

「こんな小さなことで相談していいの?」と思わずに、気になることがあれば周囲がリードして行動に移し、ご本人をサポートしてあげましょう。

<POINT>
家族のサポートで、早めに専門機関につなぎましょう。離れて暮らしているのであれば、親も子も余計に不安を感じるものです。プロの力を借りながら、安心して生活できる体制をつくっておきましょう。

受診につなげる上手な声かけ

本人が受診に対して不安感や抵抗感があるときは、どのように声をかけるとよいのでしょう。前田さんは「家族だと、つい強い口調になり、もの忘れをストレートに指摘することもありますが、それではご本人も傷つきます。気持ちが落ち込むと、周囲との関わりがおっくうになったり、閉じこもりがちになったりと、心身に影響が出ることもあるため、前向きな声かけで受診につなげたいところです。『きついことや困っていることはない?』『私には真似できないほどがんばっていて、尊敬する』というような声かけで相手をいたわり、寄り添う姿勢が大切だと思います。そのうえで、『健康診断を受けるつもりで、一度受診してみない?』と声をかけてみてはどうでしょうか」とアドバイスします。

全国の自治体では、認知症の進行段階ごとに、「どこで、誰が、どのような医療・介護・相談支援を行うか」という流れを一覧にした『認知症ケアパス』という冊子を用意しています。地域包括支援センターや役所などに設置されています。HPからダウンロードできるケースもありますので、お住まいの地域の情報収集にお役立てください。

「ご家族との会話や趣味のコミュニティなど、さまざまな人とのかかわりが認知症の予防には欠かせません。みなさんで楽しく過ごす時間をぜひ持っていただきたいと思います」と前田さん。
次回配信では、認知症や心身の衰え(フレイル)を防ぐポイントをお伝えします。

<POINT>
親を大切に思うからこそ、受診してほしいという気持ちを素直に伝えてみましょう。孫からお願いすると、受け入れてもらいやすいかもしれません。何よりご本人のために、早めの受診が肝心であることをわかってもらいましょう。

取材ライターのつぶやき

高齢の両親が自分で認知症に気づき、受診するのは、なかなか難しいことだと思います。だからこそ、周囲が積極的にかかわり、受診につなげることが大切だと思いました。早期発見で改善の可能性があるのなら、ぜひとも早く治療して、少しでも長く、いきいきと自分らしい生活を楽しんでほしいですね。

 

今回のSpecialist 前田 祥衣 さん

北九州市保健福祉局で現在は認知症支援を担当。保健師として、赤ちゃんからお年寄りにいたる全世代を対象に、住み慣れた地域で心身とも健康に生活するためのサポートを行う。


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