虫たちの活動が活発になる春から秋にかけては、家に入れたくない害虫も増える時期。快適な暮らしを守るために、早めの対策が大切です。
そこで、害虫駆除のエキスパート、有限会社モストップ取締役の白井良和さんに効果的な対策をお聞きしました。
第2回目は、神出鬼没なクモです。油断していると、隙間を利用してあっという間に巣を張ってしまいます。巣をつくられなかったとしても、壁にいる姿を見るとギョッとしてしまうものです。そこで、侵入を許さず、巣をつくらせない方法をご紹介します。
巣を張らないクモもいるって、本当?
クモは巣を張るものだと思いがちですが、なかには巣をつくらずに歩いて捕食するクモもいます。どちらのタイプも住宅に棲みつき、蚊やコバエ、ダニなど小さな虫を捕食。大型のアシダカグモにいたっては、ゴキブリを食べる頼もしさを持ち合わせます。私たちにとって害虫を食べてくれるクモは、実は「益虫」なのです。そのためクモと共同生活を送っても問題はないのですが、その姿はやはりグロテスクで、巣を張られるのは不快なものです。小さなクモでもフンで床や壁が汚れることもあります。まして、卵を産みつけられて孵化でもされたら、大量発生になりかねません。たとえ益虫でも、クモを暮らしのなかに入れたくないと思われる方が多いことでしょう。

クモが巣を張りやすい場所とは?
クモは、ドアや窓の隙間から侵入し、部屋の隅や暗くて風が当たらない場所に巣を張ります。壁の角で床に近い場所、トイレ内、物置など、人の出入りが少ないところに生息していることが多く、引っ越しの段ボールを置きっぱなしにしているとその周囲に巣をつくることもあります。
屋外では、光に集まる獲物を狙って明かりの近くに巣を張るため、玄関の照明周りは注意が必要です。またコガネグモは木の葉の間で、かつ目立つ場所に巣をつくります。「気づいたら庭の樹木がクモの巣だらけになっていた」なんてことがないように、時々チェックすることをおすすめします。

クモに巣をつくらせないために
クモは同じ場所に巣を張る習性があるため、巣を見つけたら棒や割り箸などで巣を壊し、そのまま糸を巻きつけて処分します。その後、クモ用の殺虫剤をスプレーしておけば、同じ場所に巣を張られることはありません。

巣の主であるクモは、外に逃がすか、駆除するかして、排除しましょう。クモは、人目につきにくく、人が通らない場所に巣をつくります。巣をつくったクモが見つからないときには、巣があったところを中心に、部屋の隅など気になる場所への定期的なスプレーで、巣対策を続けましょう。
殺虫剤は、クモ用、クモの巣用などがあり、卵を駆除する効果を持つものもあります。数ヶ月にわたり効果が持続するタイプやさまざまな害虫に効果があるエアゾール系の殺虫剤も有効です。
クモの侵入経路をふさぐことも必要です。網戸とサッシの間に隙間があれば、防水の隙間テープでふさぎましょう。
もう一つ、クモを寄せつける原因として、エサとなる虫の発生が挙げられます。家のなかにクモがいるということは、ゴキブリやコバエ、ダニなどエサとなる虫が発生している可能性があるため、これら害虫の駆除を優先して考えたほうがよいでしょう。
身近にいるかもしれない危険なクモ
ほとんどのクモが無害なのですが、日本にも毒グモがいます。本来は日本にいなかったセアカゴケグモとハイイロゴケグモです。1995年にそれぞれ大阪と横浜で発見されて以来、日本に定着した外来種で、すでに日本全国に分布しているともいわれます。
頻度は高くないですが、触れると咬まれることがあり、痛みや腫れなどの症状が出るため注意が必要です。もし咬まれた場合は、傷口を流水やせっけん水で洗って、医療機関を受診してください。
セアカゴケグモ、ハイイロゴケグモとも日光が当たらない物陰、隙間に生息し、昆虫類を捕食しています。
いずれのクモも、体はコロンと球体形の特徴を持ち、大きさは6mm〜10mmほど。セアカゴケグモは黒い体の中央に赤いラインが入っています。
公園にある遊具の裏側や自転車のサドル裏など人目に触れない場所に潜んでいることがあるので、しばらく使っていなかったものを触るときには注意するようにしましょう。

<注意が必要な場所の例>
・公園にある遊具の裏
・自転車のサドルの裏
・道路にある排水溝のふたの裏や側面
・ベンチの裏
・自動販売機の下
・ブロックやフェンスの隙間
・外に置いてあるサンダルの中 など
取材ライターのつぶやき
クモは、できれば殺したくないので、私は見つけたら逃がすようにしています。そのために自作の捕獲器をつくりました。500mLペットボトルの上部から3分の1ほどのところを切り取り、底がある側に飲み口を漏斗のようにして差し込んでテープで固定します。クモを見つけたら、捕獲器をクモの上に置くと、自然に中に入るので、そのまま外へ連れ出せばOKです。クモの捕獲にお悩みの方は、ぜひお試しください!
今回のSpecialist 白井良和(しらいよしかず) さん

害虫防除技術研究所代表、有限会社モストップ取締役、医学博士。
京都大学の昆虫学研究室にて農業害虫の殺虫剤抵抗性を研究後、殺虫剤メーカー研究部にてゴキブリ用ベイト剤を研究、開発。その後東京都の害虫駆除業者にて、ゴキブリ、ネズミ、ハチ、チョウバエ、ノミバエ、ダニ、蚊などの駆除に携わり、蚊駆除業務を柱に千葉県で有限会社モストップを創業。現在では蚊、ゴキブリ、不快害虫などの対策商品を、害虫を用いて効果確認する試験や、Web記事や雑誌の監修、動画投稿などを行っている。

