【column】いや〜な虫を家に入れない方法|ハチ編

2023.08.30 | 住まいのメンテナンス

虫たちの活動が活発になる春から秋にかけては、家に入れたくない害虫も増える時期。快適な暮らしを守るために、早めの対策が大切です。
そこで、害虫駆除のエキスパート、有限会社モストップ取締役の白井良和さんに効果的な対策をお聞きしました。
第3回は、被害が増加傾向のハチです。もっとも危険度が高いスズメバチの生息域は都市部にも広がっていて、戸建て住宅だけでなくマンションのベランダにも巣をつくることがあります。どこに住んでいてもリスクのあるハチ被害から身を守るために、できる対策をお伝えします。

住宅地に出没するハチとは?


車のドアミラーの隙間にもハチの巣が!

ハチの活動期は春〜秋で、秋にかけて巣が巨大になり、個体数も最大になります。住宅街で見かけるハチは、ミツバチ、クマバチ、マルハナバチ、アシナガバチ、スズメバチなど。ミツバチ、クマバチ、マルハナバチの危険度は低いのですが、アシナガバチは少し危険度が上がり、スズメバチにいたっては刺されて毎年死者が出ています。

セグロアシナガバチ
体が細長くスリムで、脚が長く、体長は2.5cm程度。飛ぶ際のスピードはそれほど速くなく、フラフラしながら飛ぶ。スズメバチよりおとなしいが、巣を刺激すると攻撃される。

キイロスズメバチ
黄色とこげ茶の縞模様だが、飛んでいるときは黄色一色に見える。スズメバチのなかでは比較的小型で、体長は2.5cm前後。毒を持ち、何度も刺す。巣は、屋根裏、軒下、床下などにつくる。

スズメバチに遭遇して騒ぐのは絶対にNG!

大きな体のハチを見ると、どうしても驚いてしまいますが、騒いだり、手で追い払おうとしたり、走って逃げたりする行動はとても危険なので絶対にやめましょう。もし相手がスズメバチだったら、興奮して攻撃的になります。

窓を開けっ放しにしてハチが入ってきた場合は、まず冷静になることを心がけましょう。1匹が迷い込んだとしても、襲ってくることはほとんどありません。騒がずに、ハチが自分から出て行ってくれるのを待ちましょう。

可能であれば、危険度が高いハチかどうかを観察してみてください。見た目でハチの区別をつけるのが難しいときは、飛び方の違いをチェック。アシナガバチはフラフラとそんなに速くないスピードで飛び、スズメバチはスピードがあり一直線に飛びます。

もしスズメバチだった場合は、声をあげずに身を低くし、後ずさりしながら距離をとって、その場を離れてください。

キイロスズメバチの巣はマンションでも!

スズメバチは、マンションのベランダやひさしの下、エアコン室外機周辺、植木鉢の植物など、高層階でも雨風がしのげる場所に巣をつくることがあります。

スズメバチの巣

巣づくりは4月ごろから始まり、最初は女王バチが1匹で小さな巣をつくります。

巣ができると産卵を始め、5月ごろからは働きバチが羽化します。ハチが増えるにしたがって巣もどんどん大きくなり、7月〜10月ごろにかけて巣の大きさもハチの数も最大になります。

8月以降は、巣に近づくだけでも危険です。スズメバチがホバリングしていたり、細かい羽音やカチカチと音を鳴らしたりしていたら、それは威嚇行動です。刺激しないように、静かに避難しましょう。

ハチに巣をつくらせないための対策

1. ベランダや庭先を整理整頓
春はハチに巣をつくられないよう警戒しましょう。隙間があるところ、雨がよけられる場所は、特に注意が必要です。不要なものは整理して、ベランダや庭をすっきりさせておきましょう。

2. 春先によくハチが飛んでくる場合は要注意!
ハチがしばしば飛んできているときは、巣をつくろうとしている予兆か、すでにつくり始めている兆候です。もし巣ができかけている場合は、早めの処理が重要です。よくチェックしてみてください。

3. 植物で物陰をつくらないように
家の周りに樹木や草花を植えすぎると、ハチに巣をつくられやすくなります。植物同士の間隔を空けたり、葉を剪定したりして、太陽の光がよく当たるようにしましょう。剪定の前には、その場所に巣がないかもしっかり確認してください。

もし、巣ができてしまったら

春先に、小さな巣らしきものを見つけたら、すぐにエアゾールタイプの殺虫剤をふりかけて、巣を壊してください。しかし、巣が大きくなり始めているときは危険です。決して無理はせず、専門業者に依頼しましょう。

自分で巣の撤去を行うときは、ハチがいない時間を見計らって行いましょう。
ハチの出入りが確認できない場合は、肌の露出を抑えた白い服装で、ハチの活動が活発でなくなる夕方以降に行うとよいでしょう。

巣が近くにあるときは、ハチが洗濯物につく可能性があります。洗濯物をとりこむ際には注意が必要です。

洗濯物にキイロスズメバチがとまっていた場合、あわてて手で追い払ったり、洗濯物を振ったりすると、興奮して攻撃される可能性があります。いなくなるまで、静かに待ちましょう。

取材ライターのつぶやき

うちの子は、ハチを見ると大騒ぎします。しかし、その声や振る舞いがハチを刺激するのなら、怖くてもじっと静かに見守るよう伝えなければならないと感じました。一方で、花の蜜を吸うハチたちのかわいさといったら! なかでも「マルハナバチ」というハチは、もふもふコロンとしたフォルムから「飛ぶぬいぐるみ」といわれているそうですよ。

今回のSpecialist 白井良和(しらいよしかず) さん

害虫防除技術研究所代表、有限会社モストップ取締役、医学博士。
京都大学の昆虫学研究室にて農業害虫の殺虫剤抵抗性を研究後、殺虫剤メーカー研究部にてゴキブリ用ベイト剤を研究、開発。その後東京都の害虫駆除業者にて、ゴキブリ、ネズミ、ハチ、チョウバエ、ノミバエ、ダニ、蚊などの駆除に携わり、蚊駆除業務を柱に千葉県で有限会社モストップを創業。現在では蚊、ゴキブリ、不快害虫などの対策商品を、害虫を用いて効果確認する試験や、Web記事や雑誌の監修、動画投稿などを行っている。


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