「フレイル」を知っていますか? 「虚弱」を意味する言葉で、健康な状態と介護状態の間をさし、適切な対策で健康を取り戻せる状態のことをいいます。家族の協力があると、フレイルを予防しやすくなり、認知症の進行を遅らせる効果も期待できます。今回は、管理栄養士の山口久美子さんにお話をお聞きしました。
フレイルとは?

加齢に伴って筋力が低下し、疲れやすくなったり、やる気が落ちて外出がおっくうになったりする状態のことを「フレイル(虚弱)」といいます。
若い世代から見た高齢者のイメージとして、体が弱ってくることは想像しやすいかもしれませんが、高齢者は心の活力も失いやすく、社会との接点も減ってしまいがちです。こうした点も踏まえて両親の生活に配慮することが、介護を避けるためには重要になります。
「『年だから仕方がない』と、あきらめないでほしいのです。フレイルの兆候に気づいて早く対処すれば、元気な状態に戻る可能性が高くなります。しかし気づかないままでいると、転倒して骨折したり、認知症の引き金になったりと、介護を早めてしまうこともあります」と山口さんは話します。
変化に早く気づくためには、日々の会話が欠かせません。生活の様子を見聞きしながら、子ども世代の私たちもサポートして、フレイル予防を進めていきましょう。
<POINT>
フレイル状態に早く気づけば、健康な状態に戻る可能性も高まります。若い世代が一緒に体を動かしたり、外出に誘ったりと積極的に声をかけましょう。
フレイル度をチェック
フレイル状態になると、筋肉量が減少して筋力が低下します。ふくらはぎの太さから筋肉量を見る「指輪っかテスト」で、フレイル度をセルフチェックできます。

① イスに座り、両足を地面につけた状態で膝を90度に曲げます
② 手の親指と人差し指で輪をつくります
③ 前屈みになり、利き足ではないほうの、ふくらはぎの一番太い部分を「指輪っか」で囲みます。
<判定方法>
「指輪っか」で囲んだときの状態を見ます。

「筋力の衰えはゆるやかに進行するため、高齢の方がご自身でフレイルに気づくのは難しいかもしれません。75歳以上が対象となる『後期高齢者健康診査』では、多くの自治体がフレイルに関する質問票を取り入れています。毎年健診を受けて、フレイル予防に取り組んでほしいですね」と山口さん。
そこで次のコーナーでは、高齢者の健診についてご紹介しましょう。
<POINT>
部屋の掃除や布団の上げ下ろしなど、いままで普通にできていたことが辛いという場合は、筋力低下が疑われます。小さな変化を見逃さないことが大切です。
高齢者の健診

74歳までは、加入する健康保険から年に1回健康診査のお知らせが届きます。75歳以上になると、後期高齢者医療制度の対象となり、引き続き年に1回「後期高齢者健診・歯科健診」を受けることができます。(歯科健診については、自治体によって対象年齢が異なる場合があります。)
「介護生活にならないためにも、健診は重要です。もしご両親が受診していないようなら、健診をおすすめください。もちろん働き盛りの方も、健診は受けていただきたいですね。健診で早期に治療できれば、将来、ご自身の介護リスクも下げることができます」と山口さんは話します。
健康寿命を延ばすためには、健診を続けることが大切です。お知らせのハガキなども一緒にチェックして、声をかけてみてはいかがでしょうか。
<POINT>
75歳以上になると「後期高齢者健診」のほか、自治体によって「歯科健診」も年に1回受けることができます。介護予防にもつながるため、健診は毎年受けるよう勧めましょう。
予防の3本柱は栄養・運動・社会参加
フレイルや認知症の予防のキーワードは、栄養・運動・社会参加の3点です。これらは密接に関連しているので、1点でも欠けないようにすることが大切です。では、それぞれどのようなことに気をつければよいか、詳しく見ていきましょう。
栄養
1日3食、主食・主菜・副菜をそろえて、栄養バランスを整えることが理想です。特にたんぱく質は意識して摂ってほしいところ。食欲がないときは、おかずから先に食べるよう勧めてみてください。
量は、自分の手で測ると、適量の目安になります。

出典:北九州市保健福祉局
「歯に問題があると、食事を摂りにくくなって体が痩せ、筋力の低下につながります。体力に自信がなくなると外出を控えるようになり、さらに筋力が落ちて……と悪循環に陥ってしまいます。食べる楽しみをいつまでも持ち続けるために、お口のお手入れも続けてください」と山口さんはアドバイスします。
楽しい雰囲気づくりもポイントになります。家族で食事する機会を増やすなど、若い世代にできることを考えてみましょう。
運動

有酸素運動や筋力トレーニングを生活に取り入れることが大切です。近所を散歩する、毎朝ラジオ体操をする、テレビを見ながらストレッチをするといった簡単な運動でも、習慣化することで健康づくりにつながります。
最近では、健康遊具を設置した公園も増えてきました。ストレッチや腹筋ができるベンチなど、さまざまな工夫をこらした公園もあるので、ご家族で楽しみながらチャンレジしてみてください。
社会参加

町内会や自治会活動、ボランティア、趣味の習い事など、やりたいことや楽しいと思えることに挑戦できるよう、ご家族が後押ししてあげてください。家族のなかで役割を持ったり、友人に会ったりすることも、社会参加の一つです。
近所の人が集まって体操をしたり、お茶を飲んだりする「通いの場」がある地域もたくさんあります。そのような場所を探してあげることも、親孝行の一つかもしれません。
「大切なのは、誰かとつながりを持ち続けること」と山口さん。
家族の笑顔も、いきいきとした生活のポイント。楽しい時間が、フレイルや認知症を遠ざけることをみなさんで共有しましょう。
<POINT>
フレイルや認知症の予防には、栄養・運動・社会参加の3点を意識して生活することが重要。ご本人だけで難しいことは、積極的に家族がフォローしてあげましょう。
取材ライターのつぶやき
親世代の介護予防を考えることは、自分自身の介護予防にもつながると実感しました。加齢による体力や気力の衰えは、誰もがいずれ感じること。でも、人生を楽しむことで健康も維持できるのであれば、どんどん楽しみを見つけていきたいと思います!
今回のSpecialist 山口 久美子 さん
北九州市保健福祉局で、地域住民の健康づくりを支援。管理栄養士の立場から、食事を通した介護予防に尽力する。

