行事のある暮らしの楽しみ方|十五夜

2026.09.09 | 暮らし全般

時代の変遷とともに、ライフスタイルは多様化していますが、昔から脈々と伝わる年中行事の数々は、私たちの日々の暮らしに心地よさと彩りをもたらしてくれます。そこで、行事のある暮らしの楽しみ方を発信している「いとよし」代表 尾﨑美香さんにお話を伺い、今の時代に無理なく実践できる、年中行事の魅力をご紹介します。
第8回目のテーマは、中秋の名月を愛でながら作物の収穫に感謝をする「十五夜」です。

十五夜とは

十五夜とは、旧暦の8月15日(新暦は9月中旬〜10月上旬頃)、1年で最も美しいとされている「中秋の名月」を鑑賞しながら、作物の収穫などに感謝をする行事です。
中国では唐の時代から、旧暦の8月15日に月を愛でながら家族の幸福を祝う行事「中秋節」が行われてきました。この風習が平安時代に日本へ伝わり、貴族が風雅な行事として楽しんだことが、日本での十五夜の始まりと言われています。のちに庶民にもこの風習が広がると、秋の収穫物を供えて実りに感謝をする行事となっていきました。別名で「芋名月」。昔は里芋がたくさん収穫できる時期だったことから、呼ばれるようになりました(地方によって違いがあります)。

「十五夜は秋の収穫祭の意味もありますから、美味しいものがたくさんある時期。お月見団子は定番ですが、私は「芋名月」にちなんで、里芋の小芋で衣被(きぬかつぎ)も作ります。
他にもきのこや秋刀魚、栗ごはんなど旬の味覚を食卓に並べようと張り切ります。お月見のしつらいをして、食事を楽しんだ後は、庭に日本酒やおつまみを用意して、ゆっくりと月を眺めて楽しみます。中秋の名月は、1年で最も美しい月といわれます。曇りの日もありますが、雲間から覗く月は表情が変わってとてもドラマチック」と尾﨑さん。
月を愛でながら、旬の料理を楽しみ、ただゆっくりする贅沢な時間を楽しむのも素敵ですね。

<POINT>
十五夜は旧暦8月15日の夜のことなので、毎年変わります。2026年の十五夜は9月25日(金)です。

お月見のタイミング

実はお月見は、年に3回あるといわれます。「十五夜」「十三夜」「十日夜(とおかんや)」と呼ばれ、それぞれに目的があります。

「十五夜」は前述したように旧暦の8月15日、「十三夜」は旧暦9月13日に行われます。今年の収穫を祝って、お団子や豆、栗など採れた作物を供えます。「十日夜」は旧暦10月10日。稲刈りがすべて終わり、田んぼの神様が山に帰ると言われています。地方によっては刈り上げ祭りとして、農具やカカシに感謝して手入れをし、お供えすることも行われていました。今年の収穫に感謝し、来年の豊穣を祈ります。

とはいえ、お月見は必ず3回しなければならないというわけではありません。採れる作物、収穫のタイミングは地域によって異なるので、それぞれの地域に合わせて、お月見を楽しめるタイミングが増えるといいですね。

<POINT>
「十五夜」「十三夜」「十日夜」の「三月見(さんつきみ)」が全て晴れると、良いことがあると言われています。

行事を楽しむプロでもある尾﨑さんは以前、ワークショップで「月待ち」をしたことがあるそうです。
「自然に囲まれた庭のテーブルに食事を用意して、いただきながら月が上ってくるのを待ちました。昔はよく行われていた習わしです。この月の出が、なんとも待ち遠しくて。少し初日の出の感覚にも近いかもしれません。月が上ってくるとわーっと歓声が上がって。丸いお月さまが上ると『こんなにも明るいんだ』と驚きました」。

昔の人の「月待ち」はもっと信仰心が強く、ご利益を願って行われていたそうですが、次第にレジャー化し、楽しい行事になったようです。

お月見のお供え物

お団子
お月見のお供え物といえば、お団子を一番に思いつきますよね。満月に見立ててお米の粉で作られた「月見団子」は、豊穣の願い、感謝、健康、幸福を表したものです。団子の数は、十五夜なら15個、十三夜なら13個にするほか、1年の満月の数で12個(うるう年は13個)、15個を簡略化した5個など、家や地域によって異なります。

ススキ
神様が降りてくる時の目印となるのがススキ。実りを迎える秋の稲穂に見立てています。ススキの葉は尖っていて鋭いことから、災いや病から作物や家を守ってくれる魔除けの力があると信じられています。飾る本数は十五夜なら5本、十三夜は3本など。奇数は縁起が良いとも言われています。お月見が終わった後、ススキは捨てずに軒や畑に飾る地域もあるようです。

里芋やサツマイモ
別名「芋名月」と呼ばれる十五夜ですから、芋類は外せません。尾﨑さんも作るという「きぬかつぎ」は、小さい里芋を皮付きのまま蒸した料理。電子レンジでも簡単に作れます。平安時代の高貴な女性が着た「衣被ぎ」が由来と言われています。

「十五夜に、月に見立てたメニューを食卓に並べるのは特別感があって楽しいですが、作るのがなかなか難しいという時は、買ったものでもいいと思います。満月に見立てて、丸いものを揃えるのもいいですね。」と尾﨑さんは話します。

「現代では『お月見バーガー』など、お月見をテーマにした商戦もありますよね。スーパーにもお月見団子がたくさん並びます。何より、お月見を楽しもうという気持ちが大事です。普段は当たり前すぎて意識していないかもしれませんが、秋の収穫に感謝することも大切にしたい。日本の行事は祈りや感謝を表しているものですから、当たり前の日常や食べられることに『ありがとう』と十五夜の丸いお月さまに語りかけてみてはどうでしょう」

取材ライターのつぶやき

そもそも、十五夜が収穫を感謝する行事だということを知らず、名月を優雅に鑑賞する行事だと思っていました(貴族のようです)。こうして得た知識を、次の代にも伝えていかないといけないな、と思いました。

 

今回のSpecialist いとよし 尾﨑 美香 さん

行事と楽しむ暮らしを提案する「いとよし」代表。
大学卒業後、花王(株)にてコピーライター・クリエイティブディレクターとして化粧品や日用品のブランディングやコミュニケーション戦略に携わる。退社後、日本文化の学び直しを求めた「室礼三千」で行事の魅力を再発見し、2018年「いとよし」を立ち上げる。ワークショップ主催、メディアでの情報発信、田んぼと暮らしをつなぐ企画など、行事や暦のある暮らしの提案を行なっている。著書に「季節の行事といまどきのしつらい手帖」(エクスナレッジ)。TBSやJ-WAVE、雑誌「天然生活」などメディアにも出演。


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