前回の記事では、「介護保険」の概要と申請から認定までの流れをお伝えしました。介護予防の視点から、今回は「要支援」の認定を受けた後にどのようなサービスを受けることができるのかをお伝えします。前回に引き続き北九州市保健福祉局介護保険課の竹内俊哉さんにお聞きしました。
「要支援」とは?

公的介護保険の「要支援」とは、自分で日常生活を送れるものの、生活の一部に支援を必要とする状態のことをいいます。要支援には、「要支援1」と「要支援2」の2段階があります。
たとえば、一人で入浴はできるものの自分では浴槽の掃除が難しい場合は「要支援1」、掃除に加えて自分では背中が洗えない場合は「要支援2」といったイメージです。
「いままでできていたことができなくなったとき、何の対策もしなければ、できないことが増えていきます。でも、リハビリなどで身体機能の改善をめざせば、回復が期待できる。『要支援』の認定を受けた方は、介護予防のためのサービスを活用することで、これまでの生活を取り戻すことも可能です」と竹内さん。
では、認定を受けた後、どうすればよいのでしょう。次のコーナーで説明します。
<POINT>
「要支援1」の状態が進むと「要支援2」の認定になります。介護予防サービスの利用で、機能改善をめざすことができるため、家族も協力して両親を支えていきましょう。
「要支援」の認定を受けた後は…

「要支援」の認定を受けたら、介護保険を使って、介護予防のためのサービスを受けることができます。お住まいの地域包括支援センター、または指定介護予防支援事業所に連絡をしてください。どのようなサービスを受けるかについては、本人や家族と話し合いのうえで決めていきます。
ここで大切にしてほしいのは、サービスを受けるご本人の気持ちです。家族にとっては「助かる」と思うサービスでも、当事者から見れば必ずしもそうとは限りません。初めてのことに、不安もあるでしょう。そんなときはぜひ、ご本人の気持ちを否定せずに聞き、その立場から考えてみてください。支援の受け方については、家族を交えて話し合い、みんなで共通理解を図っておくことも大切です。
「要支援」の認定は、介護生活を防ぐためにあることをていねいに説明し、ご本人に納得してもらうことを心がけましょう。
「介護予防に詳しい人からの助言で、話がスムーズに進むこともあります。一人で抱え込まずに地域包括センターなどの機関に相談して、最適なサービスを利用してください」と竹内さんもアドバイスします。
<POINT>
本人が支援を受けたくないという場合は、地域包括センターなどで経験豊富なスタッフの力も借りながら時間をかけて説明し、本人に納得してもらいましょう。その情報は、家族みんなで共有しておくことも大切です。
「要支援」で受けられる介護予防サービス

「要支援1・2」の人が受けられる介護予防サービスには、「訪問型」「通所型」「短期入所型」「その他」の4タイプがあります。
訪問型
専門職の人に自宅を訪問してもらってリハビリや栄養指導などを受けたり、移動入浴車で入浴を介助してもらったりすることができます。
通所型
デイサービスセンターや介護老人保険施設などに日帰りで通って、リハビリや個人の目的に合ったサービスを受けることができます。
短期入所型(ショートステイ)
特別養護老人ホームなどに短期間宿泊して、介護予防を目的とした日常生活の介助や機能訓練を受けることができます。
その他
有料老人ホームなどに入居している人を対象にしたサービスです。
<POINT>
その人に合ったサービスが選べるよう、家族も同席して選択をサポートしてあげましょう。
利用できる補助制度

自立した生活をサポートするために、福祉用具のレンタルや購入にかかる費用、介護のための「住宅改修(バリアフリー工事)」を支援する仕組みもあります。利用したい場合は、ケアマネジャーや地域包括支援センター、役所などで相談してみてください。
福祉用具のレンタル
用具にかかるレンタル料の1〜3割の自己負担で貸し出してもらえます。
・手すり(取り付けに工事を伴わないもの)
・スロープ(取り付けに工事を伴わないもの)
・歩行器
・歩行補助つえ
福祉用具の購入
入浴や排せつのときに使う福祉用具などを購入する場合、費用の一部を補助してもらえます。購入費の上限は、年間10万円(自己負担は1〜3割)です。
・腰掛便座や簡易浴槽など
・固定用スロープ(レンタルとの選択制)
・歩行器(歩行車を除く/レンタルとの選択制)
・歩行補助つえ(レンタルとの選択制)
住宅改修
自宅での転倒などを防ぐ目的で住宅改修(手すりの設置や段差解消など)を行う場合は、費用の一部を支給してもらえます。改修費の上限は、同一の住宅で20万円(自己負担は1〜3割)になります。
【重要】工事を始める前に、必ずお住まいの市区町村へ事前申請を行い、確認を受ける必要があります。着工後の申請は一切認められませんのでご注意ください。・手すりの取り付け
・段差の解消
・滑りの防止・移動の円滑化等のための床または通路面の材料の変更
・引き戸等への扉の取替え
・洋式便器等への便器の取替え(既に洋式で、暖房・洗浄機能のみを追加する場合は対象外)
・その他、上記の住宅改修に付帯して必要な住宅改修
「福祉用具を使ってみたい、住宅改修(バリアフリー工事)をしたいという場合は、一番身近なケアマネジャーに相談するのが早いかもしれません。手続きをサポートしてもらえますので、気軽に話してみてください。特に住宅改修の場合は、理由書の作成や審査が必要で、依頼してすぐにできるものではありません。希望があれば早めに相談したほうがいいと思います」と竹内さん。
年齢を重ねても、一人ひとりが自分らしい生活を続けることができるよう、介護保険ではさまざまなサービスが用意されています。若い世代も介護保険についての理解を深め、ご両親をサポートしてあげましょう。
<POINT>
福祉用具や住宅改修に対して給付が受けられます。特に住宅改修は、工事前の申請と市区町村による確認が必須です。
取材ライターのつぶやき
せっかく申請をして「要支援」の認定を受けたのに、本人が利用したがらないという話をよく聞きます。子ども側が強引に進めると、親を傷つけたり、不仲に発展したりすることもあるので、理解してもらえるように努めたいものです。もしデイサービスなどの施設見学ができるなら、親子で行くのもおすすめ。親孝行ができるいま、この記事がお役に立てるとうれしいです。
今回のSpecialist 竹内 俊哉 さん
北九州市保健福祉局で介護保険を担当。「介護予防のためには、40歳くらいから将来を意識した取り組みが必要です」と、若い世代にも予防の重要性を伝える。

